イノシシは、そこにいる。
山を降り里へ、海を泳いで島へ、人を恐れず街へ──
収穫前夜の田畑にイノシシが迫る! 人獣接近した暮らしのなかでどうすればいいのか?
瀬戸内海、中国山地からポーランド、フランスまで、共生の道を探るルポルタージュ。
■四六判並製 ■248ページ(カラー8ページ)
【目次】
はじめに 3
第一章 島で
島を越える 海を渡る 18
増え過ぎ越境「疫病神め」 18/風評で油断、対策後手に 20/禁断の実 22/仕置き人、百五十頭を半年で捕獲 24/計算違い 26/泥縄のツケ 29/たい肥・食肉、利用模索 31/恋の波路か窮余の策か 33/歴史的経緯 35/「殺生、嫌ですよ」島の心構え 37
データで見る中国地方のイノシシ事情 39
イノシシ対策費七億六千四百八十九万円 中国地方の自治体アンケート 43
コラム◉「山里荒れ、里に下る」 41/「肉の解体・販売 島根県美都に施設」 49
第二章 山里で
山里の獣道 52
人影薄れ「わがもの顔」 52/実り横取り 耕作放棄も 54/中国地方 十年で狩猟免許取得二・五倍に 56/禁猟の楽園 58/一頭十万円 盆地の町、猟果上がらず 60
果てなき模索 63
移住先の田畑で影再び 63/主客転倒 集落防衛「人がおりに」 65/牛を放牧 獣害消えた 67/根絶やしはかり多額の予算 69
行政の試み 保護と管理、調和探る 74
調査研究の拠点設置 島根県 74/捕獲増えても減らぬ害 76/被害額算定基準なし データに基づく検証必要 77/「踏み荒らし」面積のデジカメ測定法研究 78
コラム◉「自衛手段は"わな"が有効」 56/「集落ぐるり"万里の長城"」 71
第三章 欧州事情
狩猟の伝統と生態系 82
ハイシート猟 「国民の財産」待ち伏せ 82/敵役は人間 84/捕食者 保護獣に 86/「知恵比べ」根強い人気 89
獣害対策 フランスの場合 92
森に餌まき「封じ込め」 92/猟ビジネス 地域ほくほく 94
『イノシシ博士』奮闘中 中国地方で研究重ねる五人 101
コラム◉「野生を支配、気骨の狩人 農家への獣害補償も負担」 90
第四章 合縁奇縁
歴史にみるイノシシとの共存 110
牙も毛も余さず工芸品に 110/人と獣の歴史刻む傷 112/嘆き節 畏敬の心にじむ万葉歌 114
中国地方・地元に残るイノシシ伝 118
恩獣 「神仏の使い」 118/薬食い 肉食禁忌の例外 120/猪の字、名字や地名 親しみ刻む 122/忘れまい、命奪う重み 中国地方で供養の動き 124/神事に息づく共存の気風 125
コラム◉「多才で繊細 知力も自慢」 130
第五章 食らう
げなげな話 138
夏肉も逸品に 138/法の網 商品化に「待った」 140/北海道・エゾシカ協会に学ぶ ハンター育成や流通ルート開拓 142/エゾシカを食卓へ❶ 「害獣も資源」─協会発足 146/エゾジカを食卓へ❷ 黒字転換へ運営試練 149
猪肉を商品に 資源化への取り組み 151
特産狙い、珍味ラーメン 151/地域発 天然の味、全国に宅配 153/「厄介者」から名産に 155
ぼたん鍋の"主役" 158
追跡 猟師が直接、問屋や店へ 158/猪肉 食の安全管理 163
コラム◉「害獣一転、煮てよし、揚げてよし 中国地方で調理の試み」 166
第六章 人こそ天敵
街なかに馴染んでいく獣 172
野性奪う餌付けの罪 172/イノシシの街 素知らぬ顔、奇妙な「共存」 174/あの手この手 脱・獣害へ 182/しっぺ返し 里山乱す都市の食欲 184/農家支援に獣害ハイク 186
つづく試行錯誤 対策を担う決意 189
用心棒 放牧牛 189/剣が峰 農と集落守る自衛心 195
コラム◉「害獣対策、オオカミ浮上」 191
イノシシトリビア 199
終 章 「猪変」その後
獣害の世紀をむかえて 211
イノシシ「半減」作戦 212/伴走者たち 215/「現場」というやすり 219/災いを転じて 221/まず「守り」から 225/いまだに謎だらけ 229/人づくりが鍵 232
おわりに 237