女流だけの随筆集が刊行スタート!
文=東えりか
今では囲碁や将棋くらいしか使われなくなった「女流」ということば。明治以降、新しい文学の世界で「女流作家」は差別されながらも、すばらしい活躍していた。小説はもとより、その随筆は当時の世相を反映しているばかりか、作家の心情や、周辺の人々との交流が鮮やかに描かれ、今読んでも全く古びたところがない。
たまたま、仕事で女流作家の歴史を調べた際、彼女たちの随筆を手に取ると時を忘れて読みふけってしまったものだ。だから、どこか心ある出版社が随筆のアンソロジーを出してくれないものか、と願っていた。
このたび『精選女性随筆集』が文藝春秋より刊行されることになったと聞き、これこそが私の願っていたものだと早速手に入れた。
選者は川上弘美と小池真理子のふたり。それぞれが名だたる小説家の随筆をすべて読み、代表される作品をセレクションする。
第1巻は幸田文。選者は川上。同時刊行の第2巻は森茉莉と吉屋信子で、選者は小池。名文家として名高い幸田文が父・露伴を看取る場面の静謐さや、森茉莉の幼い頃の恐ろしいまでの記憶力、吉屋信子が他の女性作家を観察する視線の鋭いこと、など、とにかくすごい、としか言えないいい文章なのだ。懐かしいグラシン紙に包まれた装丁も美しい。
隔月(4・6・8・10・12月)に2巻ずつ合計12巻が刊行される。3巻以降の予定は以下のとおり。
第3巻 倉橋由美子 (小池真理子選)
第4巻 有吉佐和子/岡本かの子(川上弘美選)
第5巻 武田百合子 (川上弘美選)
第6巻 宇野千代/大庭みな子(小池真理子選)
第7巻 白洲正子 (小池真理子選)
第8巻 石井桃子/高峰秀子(川上弘美選)
第9巻 須賀敦子 (川上弘美選)
第10巻 中里恒子/野上弥生子(小池真理子選)
第11巻 向田邦子 (小池真理子選)
第12巻 石井好子/沢村貞子(川上弘美選)