「21世紀のSFベスト」牧眞司が偏愛で選んだ100冊
文=牧眞司
決定版の「21世紀のSFベスト100」は〈本の雑誌〉2015年11月号をごらんください。
鏡明、大森望の両氏にぼくを加え、目利きとは名ばかりの乱読と独断と適当をぶつけあって1位から100位まで並んだわけですが、その座談会に先立って各自が推薦作リストを用意しました。
鏡リストは〈本の雑誌〉で鏡さんが毎年担当している「SFベスト10」(2001年度〜2014年度)から原著刊行が2001年以降のものを抜きだしたもの。大森リストは大森さんの著作『21世紀SF1000』の「21世紀SF推薦作100」リストと〈本の雑誌〉の常設書評「新刊めったくたガイド」(2011年1月号〜2015年9月号)の★★★★☆以上作品をあわせて、原著刊行が2001年以降のものを抜きだしたものです。そういう意味では、おふたりのリストはすでに公開されているわけです。
ぼくはそういう元手がないもので、えいやっとワガママな「21世紀SFベスト」を選びました。あくまで参考資料ですが、このまま埋もれさせるのは残念なので----というか決定版「ベスト100」からこぼれた作品がいっぱいあってクヤシイので----ここに公開します。
■牧眞司が選んだ100冊
※なるべく一作家一作品とする。せいぜい二作品まで。
※境界作品(文学)はいちおうファンタスティックな要素を勘案して選択。一作家一作品に限定。
※短篇集は21世紀発表作が多いものをなるべく優先。
※順位はつけずに、特に重要な作品は◎であらわした。
※並び順は二作あがっている作家を先行させ、あとは作者名の五十音順。アンソロジーは最後に。
○『ひとりっ子』グレッグ・イーガン/山岸真編・訳/2006・12(日本版オリジナル編集、初出1990〜2002)/ハヤカワ文庫SF
◎『白熱光』グレッグ・イーガン/山岸真訳/2013・12(原著2008)/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
◎『魚舟・獣舟』上田早夕里/2009・01/光文社文庫
○『華竜の宮』上田早夕里/2010・10/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
◎『老ヴォールの惑星』小川一水/2005・08/ハヤカワ文庫JA
○『天冥の標』(シリーズとして)小川一水/2010〜/ハヤカワ文庫JA
○『転生』篠田節子/2007・10/講談社ノベルス→講談社文庫
◎『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』篠田節子/2011・07/文藝春秋→文春文庫
○『星を創る者たち』谷甲州/2013・09/河出書房新社
○『コロンビア・ゼロ』谷甲州/2015・07/早川書房
◎『BEATLESS』長谷敏司/2012・10/角川書店
○『My Humanity』長谷敏司/2014・02/ハヤカワ文庫JA
◎『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/中原尚哉・金子浩訳/2013・12(原著2008)/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
○『ねじまき少女』パオロ・バチガルピ/田中一江・金子浩訳/2011・05(原著2009)/ハヤカワ文庫SF
◎『双生児』クリストファー・プリースト/古沢嘉通訳/2007・04(原著2002)/早川書房→ハヤカワ文庫SF
◎『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト/古沢嘉通訳/2013・08(原著2011)/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
◎『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介/2013・05/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
◎『エクソダス症候群』宮内悠介/2015・06/創元日本SF叢書
○『粘膜蜥蜴』飴村行/2009・08/角川ホラー文庫
◎『シャングリ・ラ』池上永一/2005・09/角川書店→角川文庫
○『冬至草』石黒達昌/2006・06(初出1999〜2006)/ハヤカワSFシリーズJコレクション
○『虐殺器官』伊藤計劃/2007・06/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
○『死なないで』井上剛/2003・06/徳間書店→徳間文庫
○『宝石の筏で妖精国を旅した少女』キャサリン・M・ヴァレンテ/水越真麻訳/2013・08(原著2009)/ハヤカワ文庫FT
○『全滅領域』ジェフ・ヴァンダミア/酒井昭伸訳/2014・10(原著2014)/ハヤカワ文庫NV
○『火星の人』アンディ・ウィアー/2014・08(原著2011)/小野田和子訳/ハヤカワ文庫SF
○『連環宇宙』ロバート・チャールズ・ウィルスン/茂木健訳/2012・05(原著2011)/創元SF文庫
○『太陽・惑星』上田岳弘/2014・11(初出2013〜2014)/新潮社
◎『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター/神岡伸雄・児玉晃二訳/2013・12(原著2006)/岩波書店
○『マルドゥック・スクランブル』冲方丁/2003・05〜07/ハヤカワ文庫JA
○『遁走状態』ブライアン エヴンソン/柴田元幸訳/2014・02(原著2009、表題作初出2007)/新潮クレスト・ブックス
◎『エクスタシーの湖』スティーヴ・エリクソン/越川芳明訳/2009・11(原著2005) 筑摩書房
○『写字室の旅』ポール・オースター/柴田元幸訳/2014・01(原著2007)/新潮社
◎『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』ジョイス・キャロル・オーツ/栩木玲子訳/2013・02(初出1995〜2010)/河出書房新社
○『虫樹音楽集』奥泉光/2012・11/集英社
○『ねじの回転』恩田陸/2002・12/集英社→集英社文庫
○『つばき、時跳び』梶尾真治/2006・10/平凡社→平凡社ライブラリー
○『サムライ・ポテト』片瀬二郎/2014・05(初出2012〜2014)/河出書房新社
○『膚の下』神林長平/2004・04/早川書房→ハヤカワ文庫JA
○『ダークゾーン』貴志祐介/2011・02/祥伝社→ノン・ノベル→祥伝社文庫
○『どろんころんど』北野勇作/2010・08/福音館書店
○『回想のビュイック8』スティーヴン・キング/白石朗訳/2005・08(原著2002)/新潮文庫
○『天獄と地国』小林泰三/2011・04/ハヤカワ文庫JA
○『オニキス』下永聖高/2014・02/ハヤカワ文庫JA
○『イリアム』『オリュンポス』ダン・シモンズ/酒井昭伸訳/2006・07(原著2003)、2007・03(原著2004)/早川書房→ハヤカワ文庫SF
○『霧に橋を架ける』キジ・ジョンスン/三角和代訳/2014・05(初出1993〜2012)/創元海外SF叢書
○『誰に見しょとて』菅浩江/2013・10(初出2008〜2013)/ハヤカワSFシリーズJコレクション
○『老人と宇宙』(シリーズとして)ジョン・スコルジー/内田昌之訳/2007・02(原著2005)/ハヤカワ文庫SF
○『新生』瀬名秀明/2014・02(初出2011〜2013)/河出書房新社
○『チューリングの妄想』エドゥムンド・パス・ソルダン/服部綾乃・石川隆介訳/2014・07(原著2003)/現代企画室
◎『親衛隊士の日』ウラジーミル・ソローキン/松下隆志訳/2013・09(原著2006)/河出書房新社
○『赤い星』高野史緒/2008・08/ハヤカワSFシリーズJコレクション
○『うどん キツネつきの』高山羽根子/2014・11(初出2010〜2014)/創元日本SF叢書
○『忘却の船に流れは光』田中啓文/2003・07/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
○『ドッグファイト』谷口裕貴/2001・01/徳間書店
○『献灯使』多和田葉子/2014・10(初出2012〜2014)/講談社
◎『遠い町から来た話』ショーン・タン/岸本佐知子訳/2011・10(原著2008)/河出書房新社
◎『あなたの人生の物語』テッド・チャン/浅倉久志・他訳/2003・09(初出1990〜2001)/ハヤカワ文庫SF
◎『かつて描かれたことのない境地』残雪(ツァン シュエ)/近藤直子・他訳/2013・07(初出1988〜2009)/平凡社
○『機龍警察』(シリーズとして)/月村了衛/2010〜/早川書房
○『愛のひだりがわ』筒井康隆/2002・01/岩波書店→新潮文庫
○『バレエ・メカニック』津原泰水/2009・09/早川書房・想像力の文学→ハヤカワ文庫JA
◎『モンド9 (モンドノーヴェ)』ダリオ・トナーニ/久保耕司訳/2014・02(原著2012)/シーライトパブリッシング
○『ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ』飛浩隆/2006・10/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
◎『皆勤の徒』酉島伝法/2013・08(初出2011〜2013)/東京創元社→創元SF文庫
○『沼地のある森を抜けて』梨木香歩/2005・08/新潮社→新潮文庫
○『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』仁木稔/2014・04(初出2012〜2014)/ハヤカワSFシリーズJコレクション
◎『世界の果ての庭』西崎憲/2002・12/新潮社→創元SF文庫
○『know』野﨑まど/2013・07/ハヤカワ文庫JA
○『太陽の簒奪者』野尻抱介/2002・04/早川書房→ハヤカワ文庫JA
○『ノックス・マシン』法月綸太郎/2013・03(初出2008〜2013)/角川書店
○『時の地図』フェリクス・J・パルマ/宮崎真紀訳/2010・10(原著2008)/ハヤカワ文庫NV
◎『冷たい肌』アルベール・サンチェス・ピニョル/田澤耕訳/2005・03(原著2002)/中央公論新社
○『20世紀の幽霊たち』ジョー・ヒル/白石朗訳/2008・09(原著2005、初出1999〜2005)/小学館文庫
◎『螺法四千年記』日和聡子/2012・06/幻戯書房
◎『LAヴァイス』トマス・ピンチョン/栩木玲子・佐藤良明訳/2012・04(原著2009)/新潮社
○『オービタル・クラウド』藤井太洋/2014・02/早川書房
○『鯨の王』藤崎慎吾/2007・05/文藝春秋→文春文庫
○『星の綿毛』藤田雅矢/2003・10/早川書房
○『グールド魚類画帖 十二の魚をめぐる小説』リチャード・フラナガン/渡辺佐智江訳/2005・06(原著2001)/白水社
○『異星人の郷』マイクル・フリン/嶋田洋一訳/2010・10(原著2006)/創元SF文庫
○『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男/2005・04/文藝春秋→文春文庫
○『擬態 - カムフラージュ』ジョー・ホールドマン/2007・05(原著2004)/早川書房
○『傀儡后』牧野修/2002・04/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
○『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳/2008・06(原著2006)/早川書房→ハヤカワepi文庫
○『クラーケン』チャイナ・ミエヴィル/日暮雅通訳/2003・07(原著2010)/ハヤカワ文庫SF
○『失われた町』三崎亜記/2006・11/集英社→集英社文庫
○『ダイナミックフィギュア』三島浩司/2011・02/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
○『からくりアンモラル』森奈津子/2004・04(初出1999〜2003)/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA
○『突変』森岡浩之/2014・09/徳間文庫
○『四畳半神話大系』森見登美彦/2005・01/太田出版→角川文庫
○『まだ見ぬ冬の悲しみも』山本弘/2006・01(初出1990〜2006)/ハヤカワSFシリーズJコレクション→ハヤカワ文庫JA(『シュレディンガーのチョコパフェ』と改題、一篇を追加)
○『躯体上の翼』結城充考/2013・11/東京創元社
○『臣女』吉村萬壱/2014・12/徳間書店
○『狼少女たちの聖ルーシー寮』カレン・ラッセル/松田青子訳/2014・07(原著2006)河出書房新社
○『紙の動物園』ケン・リュウ/古沢嘉通編訳/2015・04(日本版オリジナル編集、初出2004〜2013)/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
○『マジック・フォー・ビギナーズ』ケリー・リンク/柴田元幸訳/2007・07(原著2005、初出2002〜2005)/早川書房→ハヤカワepi文庫
◎『反復』アラン・ロブ=グリエ/平岡篤頼訳/2004・03(原著2001)/白水社
○『ブラインドサイト』ピーター・ワッツ/嶋田洋一訳/2013・10(原著2006)/創元SF文庫
○『NOVA』(アンソロジー・シリーズとして)大森望編/2010〜/河出文庫