作家の読書道 第100回:本谷有希子さん

演劇界で活躍する一方、人間の可笑しみと哀しみのつまった小説作品でも高く評価されている本谷有希子さん。フィールドをクロスオーバーさせて活躍する才人は、一体どんな本に触れてきたのか? そのバックグラウンドも気になるところです。自意識と向きあう一人の女の子の成長&読書物語をごらんください。

その1「クリスティーを読み漁る」 (1/5)

  • ポアロ登場 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
  • 『ポアロ登場 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』
    アガサ・クリスティー
    早川書房
    842円(税込)
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  • ホラー M ( ミステリー ) 2010年 02月号 [雑誌]
  • 『ホラー M ( ミステリー ) 2010年 02月号 [雑誌]』
    ぶんか社
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  • お父さんは心配症 (1) (りぼんマスコットコミックス (351))
  • 『お父さんは心配症 (1) (りぼんマスコットコミックス (351))』
    岡田 あーみん
    集英社
    421円(税込)
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  • 幽☆遊☆白書―完全版 (1) (ジャンプ・コミックス)
  • 『幽☆遊☆白書―完全版 (1) (ジャンプ・コミックス)』
    冨樫 義博
    集英社
    1,234円(税込)
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――幼い頃、本は好きでしたか。

本谷:はい、ギリギリ好きでした。ギリギリ「好きだ」と言ってもいい、という意味です(笑)。小学何年生かは忘れてしまったんですが、アガサ・クリスティーの名探偵ポアロシリーズにハマったんです。母がテレビのポアロのシリーズを見ていて、私もその役者のことがすごく好きになったので本も読むようになったんですよね。アガサ・クリスティーは図書館で借りて全部読みました。全作そろっていたのかはちょっと分からないですけれど。そこからコナン・ドイルにいき、ちょっとだけ江戸川乱歩を読み...。乱歩は少年探偵団ではなくて「芋虫」とか「人間椅子」とか。母親がミステリーや推理ものが好きで、その影響を受けたんですよね。昨日思い出したんですが、舞ちゃんという女の子が出てくる「ハチャメチャ探偵帳」のシリーズを年に2冊ずつくらい買ってもらって揃えていました。あとは「ズッコケ三人組」や「かいけつゾロリ」のシリーズも。ゲームブックもすごく好きでした。その時流行っていたんですね。お屋敷に辿り着いて、扉を開けるなら15ページで、開けないならそのまま...という風に、自分の選択によってページをとばしていって、バッドエンドなりなんなりになるという。今にして思うとゲームのサウンドノベルに近いものを本でやっていたんです。漫画では水木しげる先生と、『はだしのゲン』の中沢啓治先生の作品が、怖くてよく覚えています。学級文庫においてあったのを日陰で一人で読んでいたという記憶が。

――乱歩とか水木さんとか、怖い話も平気だったんですねえ。

本谷:『ホラーM』というホラー漫画の雑誌も読んでいました。犬木加奈子先生とか、日野日出志先生とか読んでました。怖いというよりも、ワクワクする感じで。

――少女漫画は読まなかったのですか。

本谷:もちろん読んでいました! 『りぼん』で岡田あーみんという人が『お父さんは心配症』という漫画を連載していて、それが好きで。『りぼん』ではどの漫画家を支持するか、学校で論争してましたね(笑)。佐々木淳子さんの『ダークグリーン』も読みました。

――一人で本を読んでいるような子供だったんですか、それとも。

本谷:クラスではもっぱらムードメーカーだったんですよ。チョー運動少女みたいな(笑)。でも図書室に通っていた記憶もあるので、学校でのキャラクターは両極端だったのかも。帰り道に本を読みながら歩いているので「本谷! 本谷!」とよく注意されたりしてましたし。ジャン・バルジャンとか読んでました。

――『ああ無情』。国内外問わずいろいろ読まれていたんですね。

本谷:そのままいけば文学少女になれたのに。何を思ったか高学年になると、世界の七不思議の方向にいきましたね......。ネッシーなどの未確認生物が出てくる本など。「エリア51の謎」、ノストラダムス、水木しげる先生の『妖怪大百科』、「世界拷問全集」...。スプラッタ系は苦手なんですが、「拷問全集」は殺し方にもいろんな種類があるんだと分かるところが面白くて。同時に、ホラーっぽいものが好きだという自覚はあったので、最初はS・キングにいったんです。中学に入ってからかな、キングをだいたい読んでしまったので司書の方に「他にもこういう本はありますか」と聞いたら、薦められたのが鈴木光司さんの『リング』だったんです。薦められるがまま『リング2』も『仄暗い水の底から』も読みました(笑)。それから綾辻行人さん、京極夏彦さん、瀬名秀明さん、岩井志麻子さん、小林泰三さんなどを読んで...。背の部分が黒い本だったら何でもいい、という方向に行きました。新耳袋とか、角川ホラー文庫とか。ノストラダムスの預言を本気で考えていた頃だから、中学、高校の頃ですね。

――99年に世界は滅びると信じていたわけですか。自分は20歳以上を生きることはないんだ、と。

本谷:滅亡する99年が、ちょうど20歳になる年だったんですよ。それで勉強をしても無駄だと思ってしなかったんです。勉強は相当しませんでした。ノストラダムスに人生をぐしゃぐしゃにされたといってもいい(笑)。

――中学の頃は、部活動は。

本谷:テニス部の部長をやっていました。そこでも運動少女の一面がありましたね。その頃から『少年ジャンプ』を読み始めて富樫義博さんの『幽☆遊☆白書』に完全に傾倒していきました。「セーラームーン」を読み始めたのもその時期ですね。わりとメジャーなものはおさえてあるんです。

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プロフィール

1979 年、石川県出身。「劇団、本谷有希子」主宰。『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞受賞。『幸せ最高ありがとうマジで!』で第53回岸田國士戯曲賞を受賞。小説では『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が三島賞候補、『あの子の考えることは変』が芥川賞候補にノミネート。