その1「漫画を読み漁った少年時代」 (1/5)
――真保さんは東京生まれなんですか。
真保:そうなんですが、すぐ千葉県に引っ越しました。漫画ばっかり読んでいる子どもでしたね。6つ上の兄が買い散らかしている漫画を自分のものにしていました。いろんな作品を読みましたが、好きだったのは『鉄人28号』と『ハリスの旋風』。これは何度も何度も読みました。
――他に有名な作品はたくさんあったと思いますが、なぜその2作がお好きだったのでしょうか。
真保:『鉄人28号』の場合は、その前に『鉄腕アトム』でロボットは心を持つか持たないかという話を読んでいたわけですが、鉄人は心を持たないところが大きな特徴ですよね。だから人間が操縦機器を奪い合う。ブラックオックスという素晴らしい敵役も出てきて、その駆け引きも非常に面白かったですね。『ハリスの旋風』は、主人公の石田国松のキャラクターに尽きます。小さくて元気でケンカっぱやい主人公という、少年漫画の王道パターンですが、小さい男の子の読者が憧れる存在でした。その後、兄と年の近い従兄弟からも漫画をもらったんですが、それが望月三起也さんの『秘密探偵JA』だったんですよ。望月さんの漫画というのはヒーローものでもあり謎解きでもあり、ハードボイルドや冒険小説の要素もある。後になってアリステア・マクリーンを読んだ時に、望月さんはこの作家が好きだったんじゃないかなと思いました。こちらもヒーローものであり、アクションもあり、どんでん返しもあったりしますから。『秘密探偵JA』を読んだのが小学校低学年の時で、そこからミステリ的なものを好きになっていったと思います。
――その頃、小説はあまり読まなかったのでしょうか。
真保:最初にお小遣いで買ったのは『西遊記』だったと思います。小学校の1、2年生の時かな。その頃は住んでいた団地のなかに小さな本屋があって、そこで何を買おうかさんざん迷って決めたら店の人が「それを買うのね。面白いわよ」と言ってくれたのを憶えています。その後はずっと、そこで漫画ばかり買うことになるんですけれど(笑)。でも漫画ばかり読んでいたので親が将来を不安視して、活字の本を読ませようということで本を買ってくれました。それがポプラ社の乱歩の「少年探偵団」のシリーズの『怪人二十面相』でした。小学校3年か4年の頃でしょうか。字の本を買うなら親が小遣いをくれることが分かりまして、本を買うふりをしてごまかして漫画も買いつつ、「少年探偵団」のシリーズを全部読み、ホームズやルパンも読んでいきました。
――自分で書くことはしませんでしたか。
真保:小学2年生の時に作文の授業で「感想文でも日記でもなんでもいいから書きなさい」と言われた時に、小説もどきのものを書きました。クラスのみんなは1、2枚くらいだったのに自分は8枚も書いて、時間内に終わらなくて後でつけたして提出しました。動物か虫か何かの冒険ものだったと思います。まあ「みなしごハッチ」のパクリみたいなものです(笑)。
――物語を空想することは好きでしたか。
真保:そうですね。幼稚園に通って半年で引っ越したんですが、転居先の近所の幼稚園に空きがなかったためにずっと家にいたんです。当然近所の友達もまだできていないから、やることといったら人形を登場人物に見立ててお話を作ったり、架空の球団を作って1番から9番まで選手の名前を書いて、架空の試合のスコアをつけたりしていたんです。午前中は3チャンネルの教育番組を見て、午後は漫画を読んだり絵を描いたりそんな遊びをしたりして、空想の世界にいましたね。
――アニメも好きだったのではないですか。
真保:その頃は白黒で『怪物くん』や『オバケのQ太郎』をやっていました。そのキャラクターグッズが家にあったわけですね。みんなが幼稚園に行っている頃、それらを登場人物に見立てて遊んでいたんです。