第214回:凪良ゆうさん

作家の読書道 第214回:凪良ゆうさん

引き離された男女のその後の時間を丁寧に描く『流浪の月』が大評判の凪良ゆうさん。もともとボーイズラブ小説で人気を博し、『神さまのビオトープ』で広い読者を獲得、新作『わたしの美しい庭』も好評と、いま一番勢いのある彼女ですが、幼い頃は漫画家志望だったのだとか。好きだった作品は、そして小説を書くようになった経緯とは。率直に語ってくださっています。

その7「編集者が挙げた2冊」 (7/7)

――今、一日のタイムテーブルはどのようになっていますか。

凪良:朝起きてから夜寝るまで書いています。その時間全部集中できているわけではないですけれど、とりあえずずーっとパソコンには向かっています。ご飯は食べますしお風呂も入りますけれど、そういう最低限のこと以外は、全部。毎日。こうして外に出る機会がない限り。
 そう言うと、哀れみの目で見られることも多いんですが(笑)、私、書くのは本当に好きで、書いていると楽しいんです。でもそういうのって、暗い人っていうか、他に何も楽しみがない人みたいな目で見られることが多くて「ちょっと外に目を向けたほうがいいんじゃない」って言われたりもします。でも私は書いていることがいちばん楽しくて、たとえばレジャー系のところに遊びに行ったとしても、「はやく帰って原稿書きたい」って思っちゃうんですよ。でも、そういう自分の幸せって、人に言ってもあまり分かってもらえなくて。結局、その人の目で見ると「哀れな人」という、ジャッジになってしまうので、自分が仕事をしているだけでも生きづらさを感じます。

――思うのは、外部から何かインプットすることなく、パソコンに向かっているだけで、よく豊かな物語が生み出せるなということなんです。

凪良:ずっと創作に向き合っていたわけではなく、10年間ぽかっと空いていたりしましたから。「バンドやりたいから京都行くわ」とか(笑)。トータル的に言うと、今は頑張る時というか、向かい合う時っていう。本当に自分が好きなことをその時その時でやってきたので、今は小説を書くのが楽しい。めっちゃ遠くでインプットしたものが今出てきているのかなと。リアルタイムには出てこないものかもしれないです、もしかして。

――読書の時間はありますか。

凪良:読むようにしています。もう読書量の少なさが本当に恥ずかしくなってきたので、ちゃんと読むようにしていますね。読み始めると「あ、こんなに楽しい本がいっぱいあるんだな、損してきたな」と思います。

――今後のご予定は。

凪良:次は中央公論新社から。隕石が地球に降ってくる話なんですよ。さっき言った、小学生時代に書いた「宇宙船が壊れたわ」という話がここに繋がっているかもしれないです(笑)。

――終末の話を選んだということは、今度のご担当者のカラーというのは...。

凪良:「僕、『ディストラクション・ベイビーズ』が好きなんですよ」とおっしゃられたので、「この人、暴力もの書いても大丈夫だな」って思ったんです。どれだけ殺伐としていても許してもらえるわ、って(笑)。
でもその話はずっと書きたくて、じつは『流浪の月』の時もどちらを書くか迷ったんです。面白かったのが、東京創元社の担当さんも中公の担当さんも、「終末ものを書くなら、これだけは読んでおいて」というのが一緒だったんです。「その作品とは被らないようにしてほしい」って。伊坂幸太郎さんの『終末のフール』でした。東京創元社の担当さんはもう1冊、新井素子さんの『ひとめあなたに...』も挙げてくださいましたね。

――なるほど。どちらももうすぐ地球に隕石が衝突します、という世界の話ですね。

凪良:まあ、新井さんはもうすでに読んでいたのですが、伊坂さんの本は先に読んだら絶対に影響を受けてしまいそうで、読まずに先にプロットを書いて出して、それから読みました。「大丈夫、被ってない」と思っていたら、担当さんも「被ってないのでOKです」って言ってくれました。それで安心しましたが、でも、ああいう素晴らしい作品と被るところがなかったというのもちょっと悲しかったです(笑)。

(了)

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