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第3回:─五感で感じる本屋さん─

 幼い頃、よく母親と上野の科学博物館に行きました。展示品を見るだけでなく自ら体験をして物理とか歴史とかを学べる所です。すご~い広い会館を一日かけてゆっくり回ります。ウチの母親は自分の趣味か私の教育上か、アニメの映画より「大恐竜博」「古代エジプト展」に連れて行ってくれることが多かった気がします。深大寺の植物園とか箱根の山とか、鎌倉の寺社仏閣とか……時には私の友達も連れて、小学生には渋すぎるスポットを巡ったことを覚えています。そんな母の影響も有り、見て・聞こえて・体験出来る、展示の仕方が大好きです☆
 私は今、小さなコミック売り場(約25坪)の主。ディスプレイの仕方が変わっている事で度々取材のお話を頂きます。本の並べ方が変わっているというより、売り場作りがこの体験型に近いからだと思っています。

 今、シーズンネタで一番ウケているのは、<「U‐31」吉原基貴(講談社)>と言うサッカー漫画で、POPの言葉は↓
「モーニング不定期連載のためタイトルは有名ではありませんが、その筋では超・話題の作品。当店では3日で100冊以上売れました。週刊のサッカー雑誌を必ずチェックする人、ゲームで“サカつく”をやった事がある人は 必ず読んで下さい」として、6面以上の大掛かりな平積みを展開。「ここが凄い!」と私のセレクトしたページのみ見えるように工夫したも見本も展示しています。年末から、じわり、じわりと展開していたフェアがサッカーの予選などの話題で一気にブレイクです! 毎日10冊以上出るかな(1日に10冊売れると10日で100冊売れる計算なのでマーベラス! 他店で展開してない本だとペースが落ちないので1ヶ月も2ヶ月も売れ続けます。ブームで終わらないオリジナルベストセラーの強みです)

 売れ行きに左右されなくても売り場に熱気が溢れていたのが、
<汚れた弾丸―アフガニスタンで起こったことー>三枝義治(講談社)。
 マガジン掲載と同時にHPでのアクセスが凄い跳ね上がったとYAHOOのニュースにも取り上げられたノンフィクションン漫画です。戦争の悲惨さと切なさを描ききった力作。掲載時より出版社さんにラブコールを送っていた事により、フェアのために著者直筆の色紙を頂きました。イラストはすばらしく秀麗だったのですが完成度が高すぎて美しすぎたため、作品の内容を表現するべく、透明なクリアファイルを色紙の大きさに切り取り、ライターであぶり、煙草で穴をあけ、焼け焦げを作りました。色紙の上から重ねるとイラストの美しさが一転、生理的に受け付けないほどの痛ましい雰囲気に変わります。この感覚が戦争の醜さを上手くお客様に伝える事ができ、他のフェアより時間をかけじっくりその場に立ち止まる方が多くなりました。中には何度も焼け焦げのフィルムを色紙からめくったり下げたりして顔をしかめている人もいました。
 
 3月3日の雛祭りの日からは青林工藝舎+秋田書店合同の、
<丸尾末広フェア>が始まりました。
 サブカル系の雄。大先生の久しぶりの新刊に、2社が珍しくも強烈タッグを組んだ物で、フェアに申し込んだ全ての書店に、複製原画、大判ポスター、特製しおりのプレゼントの太っ腹な企画。出版社さんの愛に答えるべく当店でも見世物小屋っぽい雰囲気で空間演出にいそしみました。椿の造花を何本も飾り、故寺山の音楽家J・Aシーザーの音楽をフェア売り場に流し、赤い提灯や番傘もご用意。本屋っぽくない、おどろおどろしさ、にオシャレ系のカップルが次々と立ち寄っております。

 準備中なのが、自治ネタで、
<牛丼漫画>フェア。POPは↓
 街を歩く男女二人連れ、牛丼チェーン店の看板を見て男がつぶやく。
 男「あ~ 牛丼食いてぇ……」
 女「作ってあげよっか?」
 男「えっ、作れんのオマエ」
 女「えー簡単だよぉ。今度作ってあげるね(ニッコリ)」
勝負は決まった!! 今、牛丼が作れる女はモテモテだ!

こんな感じのCMのような台詞が入ったパネルを用意して、数あるコミックの中から牛丼のシーンが入った物をセレクトしています。中でも小学館の「美味しんぼ」と講談社の「クッキングパパ」の牛丼レシピは外せませんね! これをキッカケに大作が多い料理漫画に親しんでいただけたら幸いです。
 
 ダー、と書いてしまいましたが、ね、それぞれ面白そうでしょ?(笑)

 コミックは新刊に注目が集まり春夏秋冬で出版社さんからのご提供のフェアを展開する事が多いジャンルです。でも日本は「春、夏、秋、冬」の四季だけじゃなく……梅春(春の前)、新学期シーズン、梅雨、夏の前、夏の終わり、クリスマス、お正月、帰省の時、など、実に賑やかに絶対数の人々が一斉に季節の変わり目を共有できる感性豊かな国だと私は感じています。それに合わせて、どんどんフェアを重ねて行きたいですね。

 昨年も夏には社員やアルバイト有志で浴衣で過ごす「ゆかたday」 を作ったり、クリスマス前後2週間はレジスタッフ中心にサンタ帽を被って接客したりしました。イチオシの本の応援のため手作りのTシャツを10人以上お揃いで着て宣伝したりもしました。
 目で見て、売り場に来て、雰囲気を楽しんで、かつ今一番旬の本を買って頂く。アミューズメントスポットのようなお店を目指して常にあたらしい「びっくり」を探して勉強中な毎日です~。

(やっと連載三回目。思っていた以上にこちらを見て感想を沢山頂き、嬉しいやらプレッシャーやら☆
 スペースをお借りして、よく聞かれる事のお答えを補足としてちょびっとね。
 こちらの連載は日記と言うよりコラムに近いので、更新は月2回~4回の予定です。
 前回に書いた「書評」は関東近郊での流通の女性情報誌「Hanako」さんです。大御所・田口久美子さん、藤田香織さんに挟まれて毎月最後の週だけ担当しています)
    

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