第9回:~漫画賞と書店員と私~
先日、平成16年度 第28回 講談社漫画賞が発表になった。
少女漫画部門を「のだめカンタービレ」が受賞した。
文字にすると事実はたった2行である。
でもこの事実をはじめて知った時の私の喜びは原稿用紙200枚位書いてもまだ書き足らない。
プロフィールにも書いているのだが、この「のだめカンタービレ」(講談社 二ノ宮知子/著)は私が大・大・大好きな作品で、かねてから大プッシュ!のコミックなのだ。応援団を結成してオリジナルフェアを展開したこともある。自店だけでなくお友達の書店員さん達に声をかけ全国有名書店(有志)22店舗参加の大規模応援団であった。旗印にはそれぞれがお金を出し合い、自腹Tシャツも作った。その数なんと100枚! まだ作品自体が大ブレイクする前の事で、この応援団のお店で積極的に平積みをすることを講談社サイドも二ノ宮先生御本人様もとても喜んでくださり様々なバックアップをしていただいた。(先生の直筆メッセージや作品に出てくる音楽のCDを提供など)過去の事なのでサラリと書けてしまうのだが、じっくり思い出してみると 色々苦労した事が沢山沢山思い出され、いまだに胃が痛くなってくる(笑)。
「自発的販促フェア」というのは、通常のフェアと違い全ての準備を自分たちでやらなければならない。Tシャツの発注から数量調整、お金の一括前払い、期日までの確実な発送、フェアの呼びかけから色々な連絡事項までを電話やFAXやメールで流す事、マスコミ用のプレス製作と、お客様へのフェアの概要説明のPOPの製作など、細かい調整を来る日も来る日も重ね、実に「のだめずくし」な毎日であった。新刊に合わせて一斉にTシャツを着よう!(またはディスプレイ)という企画だったので、準備期間の間は睡眠が3時間くらいだったかな。もちろん通常の本屋業務もこなしつつだったので、足りない時間を補うためにこちらも朝から晩までお店に通しシフトで入っていた。
苦労話をぼやきたいのではない。↑こんだけ頑張った漫画が賞を取った。という事実を噛み締めたかっただけ☆ 書店員というのも本屋のいち社員なので儲けることを真剣に考えなくてはならない。売り上げを上げるために日々コツコツ頑張っている。どんなに好きなタイトルがあっても儲けを度外視してよい場所に置き続けるのは難しいだろう。「応援団」というのはボランティアのような感じで本当に推薦したい本をひたすら頑張って“応援”するのだ。時にそれは「内輪受け」と評されたり、「ゴリ押し」と囁かれたり、「そんなに良い本なら自店だけで売りまくって他の本屋には教えないほうがプロとしては賢明なのではないか?」などと苦い質問もされてきた。「一生懸命頑張る」姿というのは世間一般で時として「かっこ悪い」イメージもあるらしい。熱い=ダサイのだ。
もちろん活動に対してのご支援もいただき、100人の「自腹~s」だけでなく様々な人達にも支えてもらった。「がんばってね」というお言葉のどんなに嬉しかったことか……。
取材なども何件が受けたので、自店だけでフェアをやる数10倍以上の効果を応援団活動で「のだめ」を押すことで出来たと思う。
お世話になった方々に、発起人で窓口係りの団長の私からは「ありがとうございます」の言葉しか渡せない。それを心苦しく思っていたのだ。そんな時の受賞のお知らせは「嬉しい」半分、「ほっとした」半分、というのが正直な気持ちだ。
漫画賞受賞は100%二ノ宮先生のお力だと思う。純粋に作品が面白く、ジワジワと世間に広まりここまでヒットに繋がっているのだ。決して「私たちの応援団活動のおかげ」とは言わない。でもこの作品をヒット前に“しかけ”られた喜びと、フェアとして店頭に大きく展開した勇気を自ら表して「のだめ応援団!やったんだよ私達」と大きな声で叫びたい。
ちなみに昨年度の講談社漫画賞少女漫画部門の作品「ハチミツとクローバー」(集英社羽海野チカ/著)もメンバーは少し違うが、「応援団・自腹~s」の活動をした作品だった(ハチクロが応援団活動第一弾、のだめ~が第二弾)。
第三弾は「回転銀河」(講談社 海野つなみ/著)を先ごろまで活動していた。
まだ3回しか「応援団」活動は行ってないが、漫画賞受賞が内2点ということで、笑いながら「今のところ勝率めっちゃ高いじゃん」とか「2冠達成!」とか仲間内で言い合ってニヤケている毎日なのだ。ま、元気を出すための“おまじない”のような感じですがね。過去をねぎらい未来へのエネルギーにする。悪くない“プチ天狗ごっこ”である☆