第11回:~怒ってます。セルジオ越後ばりに!~
出版社のディスプレイコンテストの募集のFAXが来ました。とあるコミック雑誌とそれに連載している作品の応援を強化しよう、というもの。私はコンテスト大好きです。でも今回の企画で解せないのは、商品が「商品券」だった事。最優秀ディスプレイ賞は2万円プレゼント。手書きPOP賞は5千円、キャッチフレーズ賞は5千円……など全て金券が告知されてました。
ディスプレイコンテストというのは、雑誌の創刊時などにお店の目立つ場所でフェアをおこない盛り上げていこうという趣旨のものです。現場の士気を上げるため出版社さんが順位を付けるのが一般的で商品もたいていは付きます。一番良いものでパソコン、次がDVDプレイヤー、三位あたりでデジタルカメラ、などが多いですね。でもあくまでも 現場で使えるお店に対しての共用物としてのお礼だと感じています。ディスプレイをして写真を送った担当者の個人への商品ではありません。
それに商品が金券ということは、書店員の直筆POPの能力はたかか5千円 と査定さてた気がしました。安いですね~。プロの販売員を馬鹿にしてますね~。
たとえばネクタイを買いにいったとしましょう。店員さんが寄ってきて「何かお探しですか?」とにこやかに接客してくれます。書店にとってPOPはコレ。一人ひとりのお客様全員に声をかけることは出来ないけど、売り場担当者が自店に合った切り口で心を込めて接客している旗印なんです。発売初日に3冊しか売れなかったものがPOPをつけ次の日には20冊売る事もざらです。広めのディスプレイを展開して通常60冊しか売れない作家さんを200冊売ることも可能です。そこに書店員の愛と熱意があればお客様はその本を手に取ってくれるのです。日本全国の書店員が日々努力を重ね研究しているプロとしての能力を甘く見てもらってはいけません。こちとら遊びじゃないんだよっ、と思わず叫びたくなりました(いや、開店前だったので実際叫んでいましたが。)。
ディスプレイやPOP書きは周囲の理解と協力がなければ、なかなか継続的に大きなものはできません。仮に今回のコンテストで賞に入ったからといって「5千円入ったから、皆でお菓子でも食べよう」という姿はあまり無いでしょうね。コンテストの名義はお店全体のものであることが多く、金券じゃ担当者エリアまで下がってこないと思うから。なんか、もっと皆で喜べる記念になるものがヤル気が出てきます。たとえば……
休憩室において皆で使える、マッサージ椅子、ミニ冷蔵庫、なんていいかも。
売り場で出版社の宣伝にもなる、台車や滑車付のミニワゴンもGOOD。
意外にもらったことがないのが トロフィーとかお店に飾れるもの。
大量のジュースとか駄菓子の詰め合わせなんてのも盛り上がっちゃうかも。
なるべくならこれらの物に「OO年度OO大賞受賞××店様」と入っていると記念になって大切に使うと思います。
5年後くらいに何も知らないスタッフが入って来て「コレすごいですね。賞取ったんですか?」って聞く。「ああソレ、俺が昔コミック担当だったとき頑張って飾りつけして貰ったんだよ」なんて店長が少し照れながら答える……ね、いい感じでしょ? お金じゃこうはいきません。
誠意と言えば、物品の商品よりも本屋さんが喜ぶものもありまして、「作者直筆POP」とか「宣伝タレントさんのサイン」は書店員にご褒美というより そのお店のお客様に喜んでいただけるアイテムとして大歓迎です。私たちは自分が何か物をもらうよりお客様が喜んでくださって「すご~い」とか売り場で楽しんでいる姿を見るのが何よりも好きな人種です。コレもお金では買えないサービスですね。
(1) ディスプレイコンテストで頑張って対象作品の色紙などをもらう。
(2) 「コンテストで入賞していただきました。この色紙があるのは日本で当店のみ!出版社さん先生ありがとうございます」とコメントをつけ本と共にコンテスト後も展開。
(3) 今までのファン+新規の読者が増える出版社さん、書店、お客様、全てに良いことが起こる 良い循環になる例です。コンテストも一過性ではなく結果として物凄いお店の戦力となりますし。
コンテストではありませんが、私がいままでで嬉しかったご褒美は「応援したコミックの中に、お店が登場した事」です。登場人物が立ち読みしている本屋の名前が「山下書店」で、本当にチラッとコマの片隅に映っている程度ですが、コレは漫画家の先生がウチの大量発注にお礼として書いてくださったんです。なんかもう、今まで以上にバリバリ売る気になりましたよ☆気が付いたお客様も笑ってくださいましたしね。
お店によって、書店員によって、喜ぶ(士気が上がる)ものは違うと思います。でもなるべく「明日」に繋がるものがいいです。私たちは娯楽を売っているのですから。明るい方に向かって行きましょ。私の中では「お金を目標に頑張る」ってダークな感じがしてピンとこないものがありました。
お金で熱意は買えないの。でも誠意と熱意は等価交換なんですよ。書店員のヤル気を120%盛り上げてくれる企画を待ってます!! いうことで、以上現場からでした~。