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第13回:~LOVE LOVE 「あさのあつこ・バッテリーによせて」~

 ハマっている。むっちゃハマっている!!
 先ごろ角川文庫で発売された あさのあつこ著「バッテリー」を読んでしまった。

 この本は教育画劇という児童書の出版社さんから大判のハードカバーですでに5冊出ていて、この分野に詳しい方には「いまさら…」というくらい有名な本だ。それをルビなどを無くし、一般の読者に手に取りやすいサイズにして文庫版の刊行が始まった。値段も1冊、1500円から552円とかなりお得になっている。文庫版Ⅱ巻が出て間もないのでお近くの本屋さんで か・な・ら・ず 良いところに積まれているはずだ。是非是非、手に取って欲しい!
 
 かつて私も「若い女性に大変人気がある。児童書なのに…すごい感動する」という声に、「題名が“バッテリー”でしょ~?色んな個性の子供たちが、ぶつかり合い成長する熱血小説なんじゃないの~?」と手に取るのをためらっていた時もある。ところがある日手持ち無沙汰に駅で買って何気なく読み進める内に電車の中で号泣してしまった。
 
 私は物心ついた時から、本がぎっしり詰まったそそり立つ硝子の扉の本棚を眺めながら育ってきた。母親が文学少女だったのである。そして寝る前には必ず父親が昔話しなどを読み聞かせてくれて、「本」を身近に感じながら育ってきた。(ま、途中でわき道にそれて自分が選んだのは漫画のプロだったんですが…)そんな環境の中、年齢に合わせて必読図書を与えられてきた。突然母から「そろそろコレを読みなさい」と本を渡されるのである。大抵は年齢よりもグレードの高いものも多く、理解を完全にしないながらに頑張って読んだものである。読み終わって感想を言うと、その言葉にまた母がコメントを寄せてくれたのを思い出す。時には「もう少し大人になってからこの箇所は読み直すように」と諭された事もある。そんな中で一番印象に残っているのは小学生時代に読んだ「路傍の石」と、中学生時代に読んだ「青春の門」である。両方とも泣きに泣いた。泣かせようとする場面よりも何気ない登場人物の感情の動きに当時の年齢の不安定さが重なり、熱い涙が止まらなかったのだ。これらの本は年齢ごとに、時々読み返したりもしている。
 
「バッテリー」も久しぶりにそんな熱い涙を流した。
 ああ、この本を子供時代に読みたかった!!!!!
 
 しかし、時はすでに遅し。筋トレに燃える立派な大人になってしまった今、私に出来る事は この本を売って売って売りまくる事しかない。そして薦めまくるのだ。

 普通の紹介で、ストーリーを簡単に説明すると、
「凄い早い玉が投げられる中学生ピッチャーが親の転勤で田舎に引っ越してくる。様々な個性の仲間たちとのふれあいの中、大自然を舞台に、我が強かった主人公が少しづつ成長していく過程を丁寧に描いたヒューマンスポーツストーリーである」簡単な“あらすじ”は本当にカンタンだ。カンタンすぎる。
 
 では文学好きの若いお姉様にはこうしてはどうだろうか?
「主人公は繊細で美形のクールな天才型ピッチャー“巧”。パートナーのキャッチャーは田舎の育ちの素直な野生児(でも大病院の息子)で、年齢にしては育ちすぎた大柄な“豪”。中学進学を控えたある季節に運命の2人は出逢った… 体が弱く天使のように素直に兄を慕う巧の弟“青波”(セイハ)や野球部のキャプテン“海音寺先輩”など魅力的なキャラが満載。作品全体に「もぅ、やめーや」などの方言が飛び交い、子犬のようにじゃれあう飛び切りのイイ男予備軍(まだ小・中学生だけどね)に貴女はきっと熱くなる。」

 30代以上のサラリーマンには…
「さぁ、思い出してみて下さい。 子供時代には“分かっているけど納得できない”と心の葛藤が沢山あったはずです。大人になるにつれ忘れてしまったそんな熱い思いを物語の登場人物と一緒にもう一度味わってみませんか? 春には春の、夏には夏の、季節感溢れる文章はまさに児童文学の真骨頂! 全編を貫くストーリーの骨太さもさることながら、文章全体から滲み出るような風景のダイナミックさは特出です。鳥の囀り、木々のきらめき、夕暮れの寂しさ、子供ならではの体温の熱さ、グランドの湿った土の匂い、口の端に残る鉄臭さ、などノスタルジック溢れる1冊。どんなアミューズメントスポットよりあなたを真の癒しに誘う事、間違いなし」

 けして誇張ではない。すごく多角的に造り込んだストーリーに登場人物が「生きて」いる「成長している」内容だ。チェーホフも真っ青。スタニスラフスキーもにんまり☆だと思われる!!

 文庫ではⅡ巻がでたばっかりなので、Ⅲ巻はまだ先かな? ハードカバーの方でも完結間が年末に出るか、どうか、という所。
 文庫版はⅠ巻Ⅱ巻、両方とも新刊台の一番良い場所に積んである。(文庫担当者も好きらしい)。それだけでは納得できず店長に「お願いがあります!ハードカバーの児童書を何冊か入れて下さい」と直談判。児童書は店長の管轄だが、なんと教育の専門書の棚にあさのあつこコーナーはだいぶ以前からあるそうで、うかつ、リエコ知らなかったよ…ま、それでも「いいよ、何冊かづつあつめにしとこうか」と店長の了解を経て追加発注。本日無事に届いてお店に出した所、文庫と合わせた全巻買いが私がレジに入っている時にあったのだ! 思わず「今日入ったばっかりなんですよ~ラッキーですね~」と話しかけてしまった。文庫版を読んで面白かったので離れて暮らすご実家のお母様に送りたくなったそうだ。ウチも母と一緒に読んでますよ~とお客様と盛り上がってしまった。入荷した日にスグ本が売れるということは新刊以外では珍しい。何日か置いておくとパーとはけるのがウチの店なのだが、この反応はすこぶる良い。
 
 月曜日になったら、また店長にお願いするつもりだ。(この文章は金曜日の夜書いている)。今度は「バッテリーを大量に平積みさせて下さい」と。そうなると大体入荷は9日位になるかな。
 たとえ児童書場所ではハリーポッターの山積みで置く場所が無くても、教育書では各1冊差しでも、なんだったらコミックコーナーで大量に展開しよう。すでに、あさの先生の他の作品の検索や、貴重なとある野球コミックへのあとがきの寄贈など情報は集めまくっている。

 書店員の中には自分の好きな本はあえて避けて通り、こっそりと密かに売るのを好む人も多い。最近になって「本屋大賞」などが表舞台に立ってくると「好き」を売りにすることが恥ずかしくないやり方と定着してきたが、職人と言われる仕入れの能力が高い人達ほど自分の好みだけでは本の無茶な仕入はしない。しかし私はそんな風潮とは真逆に居る。リベラルリエコと呼んで欲しい。毎日、バッテリーは積んである本屋で働ける…と思うと今から心ウキウキなのだ。

 え~関東近郊の皆様、バッテリーの児童書版をお探しの際は「新宿の山下書店」までどうぞ。どんな場所を裂いても7月中旬から今年一年は平積みを確保する事を誓う也。
 乙女心を掛けた誓いだ。もし万が一、何かの事故で本が並ばなかった時のために、一応クラフトエヴィング商会に針を千本くらい注文しておこうかな、それほどの覚悟で望もう★

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