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第16回 2002年9月□日

 去る8月13日、14日、15日の3日間、有楽町にある東京国際フォーラムで、開館5周年を記念して、TOKYO ART JUNGLE(トーキョー・アート・ジャングル展)なるものが開催された。東京国際フォーラムの巨大な空間に、音楽、パフォーマンス、ファッション、映像等々、様々なジャンルの作品が同時に展開する大規模なイベントだ。プレイベントとして、8月1日から15日まで、会場での展覧会の延長として、アートを乗せた列車『トーキョー・アート・ジャングル』号がJR山手線を走行したので、たまたま乗り合わせた人は「なんじゃ、こりゃ」と思われた方もいるかもしれない。

 東京ランダムウォークは、ミュージアムショップとして、このイベントに参加。東京国際フォーラムAブロック1F(東京国際フォーラムは、大きく分けて、A、B、C、Dブロック&ガラスホール棟から構成されている。丸の内にありながら、このスケールのバカでかさはかなり異質、結構圧倒されます。)の一画を使い、今回出展しているアーティスト達が手がけたTシャツ、CD、DVD、グッズ、書籍等々を展示販売した。

 そもそも、ミュージアムショップ出店の話が突然舞い込んできたのは3ヶ月程前。TOKYO ART JUNGLE全体のキュレーターを勤めたDさんが是非ともミュージアムショップは東京ランダムウォークにやって欲しいと話を持ちかけてくれたのだ。Dさんは、わざわざ六本木の当店まで足を運んでくださり、今回のイベントの主旨を熱っぽく語られた。Dさんには、台湾で出版されている「漢聲」という中国の伝統文化を紹介するビジュアル本の取引でお世話になっている。そんなからみもあって、店長のイナバとDさんは以前より面識があった。とはいえ、あまたの数ある書店の中で、東京ランダムウォークのようなちっぽけな書店を指名してくれるなんて、本当にありがたい。

 分厚い企画書を前にDさんの説明は続いた。初めて聞く話なので、少々戸惑いながら店長のイナバと僕は耳を傾けた。Dさんはカルフォルニア生まれ、国籍はわからないけど、外人さんだ。目の色がグレーともブルーともつかない微妙な色あいで、見つめていると、とても神秘的で美しい。(こんな表現をすると誤解されそうなので断っておくけど、Dさんは男性です。)彼の流暢な日本語の語りを、神秘的な瞳に吸い込まれるように聞き入った。話はなんとなくわかったけど、まだこの段階では、イベントの全体像がボワーっとしていて、雲を掴むような感じだった。ただ、はっきりしているのは、東京ランダムウォークにミュージアムショップを担当して欲しい、詳細については徐々に詰めていきましょう、ということと出店に際して費用はかからない、ということだった。費用がかからない!ここが何はともあれ一番重要だ。イナバも身を乗り出す。

 話が一通り終わり、Dさんが「検討した上、返事下さい。」と別れ際の挨拶。
「やりましょ。」イナバ即答。
「やるしかないでしょ、こんないいお話、なあ、ナベ。」
「やるしかないです。」と僕もうなずく。
こうしてTOKYO ART JUNGLEへの東京ランダムウォーク、ミュージアムショップ出店は、いとも速やかに決定されたのだった。

 Dさんを送りだし、少々興奮した面持ちでイナバが「ナベ、なんだかすごいな、これ。すごいぞ、こんな話なかなかめったにあるもんじゃない、いやーすごい!」すごいの連発。
「はっきり言って、すごいです。確かにすごい。」僕もすごいの応酬。
「ところで、ナベ、イベントの企画説明わかったか?俺、なんだかよくわかんなかったんだけど。」
「僕もよくわからなかった。企画書じっくり読めば、わかるんじゃないですか?」
「そうだな、まだ8月までたっぷり時間はあるしな。近づいてきたら、うちがやることも、だんだんわかってくるだろ。」さらっとイナバも納得顔だ。
「だいたい、アートっていうのは、なんだかよくわからないものなんですよ。」と僕もわかったような口をきく。
「とりあえず、やるしかないだろ。参加アーティストもまだ完全に決まってないようだし、来月ぐらいから徐々に煮詰まってくるんじゃないか?」
「そうですよね、そうしましょ。」実にあっさりと2人して合点する。

 こんな軽いノリで、なんだかよくわからないまま、TOKYO ART JUNGLEミュージアムショップ出店はスタートした。結局、このなんだかよくわからないという感じは、イベント最終日まで、つきまとうことになるのだが、この時点ではそんなこと知る由もなかった。……。
                              つづく

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