第4回
新潮文庫の棚の前に立って、まず最初に気になることはなんでしょう?
「アイウエオ順に並んどるのか」なんて初々しいことでもなく、「なんで阿刀田高先生だけが、背が赤と緑のグラデーションなんだろ」とか、「Yondaはどこだ?」なんてことでもない。
そうです、気になるのは、ペロペロと垂れ下がるあの茶色い”しおり紐”、スピンです。
入荷したときはページの奥深く挟まっていたはずのしおり紐が、いつの間にか本からペロンと飛び出て、見渡せばあちこちに茶色の紐が垂れ下がっているではないの。ううっ、これがまた気になるでしょう?
ということで、今回は“しおり紐”スピンがお題。というか、本に挟まっているもの全部。
しおり紐は便利ですね。文庫は、残念ながら新潮文庫にしか付いていないけれど、あれば必ず使います。
でも、段々と紐の先がほどけてきて、もさもさっとケバだってきちゃう。
このケバだった状態の紐を、ペロンと出したまま棚に入れていると、もさもさ部分がクィックルワイパーのように灰色のワタボコリを集めちまって、汚らしいこと。
おー、早く直さないと。
なるべく、本は入荷してきたときのまま、要するに新刊のように、棚に入れ込んでおきたいので、紐も元々挟んであった場所に入れ直します。一度紐を完全に取り出してから、キュっと奥に挟み込み、下側3分の1くらいを折り返しておしまい。この、キュッと奥に挟み込むというのがコツ。ゆるめちゃダメ。これで、すぐには飛び出してこないでしょ。
紐を挟み直す場所については、ちょっと試行錯誤しました。お客さまの邪魔にならないよう、最初から一番前や後ろに挟んでおいた方がいいんじゃないかとか。大体、元々挟んであった場所なんて良く覚えてないし…。
でもあるとき、紐が挟んであった跡がくっきりついているページを発見。アンモナイトのような、しおり紐の化石。そこは、紐が糊付けしてある箇所に最も近いページでした。そしてそのページには、おなじみのスリップや、今月の新刊案内などのリーフレット類も挟んでありました。どんな仕組みが働いているのかわかりませんが、要するに挟み込みモノは、全て1箇所、それも紐糊付け場所に近いページにまとめて挟み込まれるようでした。
ということで、それからは流れるような手さばきに。本当か。
本の中に挟みこまれているものは、当然宣伝物が多いのですが、お客さまにとっても楽しみのひとつ。でも度を過ぎたモノは、ちょっと大変です。挟み込んじまえば、お客さまに届くとばっかりに、大量だったり、大きかったり。
何枚も挟んであると、その重みでずり落ちてしまい、棚の奥でくしゃくしゃになりがち。つまりゴミですよ。厚みも増して、この束がなければ、もう1冊棚に入るんじゃないかと思うことも。
また、本体より大きいものをムリに挟むと、上からも下からもはみ出して醜い。これは仕方がないので、も1回折って小さくします。手間かけさせるぜ。
以前、通勤電車の中でつり革につかまって新潮文庫を読んでいたら、前に座っていた人から急にしおり紐を引っ張られたことがありました。おっ、なにすんだ!? ワタシは背が低く、その人は背が高い。紐を外側に出して読んでいたので、その人のちょうど目の前にワイパーのように揺れていたのですね。うっとおしいんだよ!って怒鳴られた。先っぽが相当ケバだってもいたから、きっと鼻もむずむずして怒り倍増。ごめんなさい。