【2014年1月14日】
ベトナムの女性が美しく見えるのは、アオザイを着ているからだ。
でも町でアオザイ姿は見かけなかった。ホーチミンの日本食レストランが多い地区を歩くと、淋しさが壁にしみこみ、金子光晴風なアジアの旅情を誘う。
ある餃子屋で日本のアサヒビールを飲みながら「自殺」末井昭(朝日出版社/本体1600円)を再び読みふける。
作者の末井さんを偶然に見かけたのはかれこれ30年前であった。おいしい焼肉屋で有名な新宿長春館。その時は南伸坊さんたち5〜6人と炭火に網を載せた上カルビを食べていた。みなさん迫力ある食べ方、飲み方をしていた。でも本人の姿は海に漂うマンボウのようにボンヤリというのかボーとしていた。高笑いが続く輪の中で一人「ボンヤリ」とタン塩ハラミを食べていた。その得体のしれないボンヤリ感に、私は深い感動を味わった。
「気になるなあ。あの得体のしれない服装も」全体にくすんだ服を着ている。新小岩の路地裏で買ったような悲しみの雰囲気の服であった。地方から出てきた人が好む茶系の服であった。
そのさりげなさが私の胸を揺すった。やがて月日が過ぎ、母親がダイナマイトで心中した事を描いた「素敵なダイナマイトスキャンダル」を読み、驚きと赤裸々で新鮮な文に体が震えた。
やがて月日がたち2013年12月27日「自殺」を成田空港の書店で導かれるかのごとく買った。
末井さん本人の話もすごいが、「二人のホームレス」「樹海探索」「聖書との出会い」こういうページに手が何度も止まった。
ビールに宇都宮餃子。ここはベトナム・ホーチミン。気候は半そで短パンと暖かい。「自殺」を読むのに一番適した店である。
「自殺」は名作である。噂に聞くと本人が出版社の営業の人と書店周りをしているというではないか!! このひたむきさ。
みなさん必ず買って買って買いまくってください。
特に自殺を感じさせる友人にプレゼントしてください。
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2014年1月14日