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  ああ言えばこう食う  ああ言えばこう食う
  【集英社文庫】
  阿川佐和子・檀ふみ
  本体 514円
  2001/6
  ISBN-4087473317
 

 
  石井 千湖
  評価:B
  頭の回転が速くてチャーミングな阿川佐和子もいいが、壇ふみが好きだ。連想ゲームで理知的な印象をお茶の間に与えていたこの女優、悪友の阿川佐和子に言わせれば「こんなにバカなのに、誰もそうだと思っていないのはもったいない、もったいない、もったいない……」のだそうだ。気が長いわりには何でもハッキリさせないと気がすまない律義者。底無しの食欲。行き場のない愛情を自覚し、これと決めたものには惜しみなくそそぐ。数々の失敗談も「こんなワタシにもちょっぴりドジなところがあるの」ってな感じの媚びをまったく感じさせない。そのくせ下剤のことを書いても失われない気品はどうだ。無頼派の父の意外な一面も語られていて面白かった。

 
  内山 沙貴
  評価:C
  著者二人、云うこともやることもとにかくおもしろい。一応往復エッセイだが微妙に話がかみ合っていないところもまたおもしろい。なんか傑作なエッセイである、と感じる。家族という切っても切れない縁をちゃんと根本に持った二人に触れていると、普段は忘れてしまう大切な存在が身に染みてくる。ではこの二人の関係は何なのか。悪口を云う友?何を言っても平気な相手?私は二人のことをただの友人だと思う。気に入らないところは直させる。意地でも自分の意見は通す。本来友人とはこうあるべきではないかと思う。やりとりが活字になった瞬間言葉では見えにくかった相手への思いやりが見え隠れし始める。読んでいて気持ちのいいエッセイだった。

 
  大場 義行
  評価:C
  食に関するエッセイかと思ったけれど、読んでみると妙齢のご婦人方の井戸端会議本だった。かけあいの意味も最後までよく判らんかったし、なんで二人のイラストは違うんだろう。しかも文章が軽すぎる。と、なんだかんだ言いつつも、三百人分のクッキーを焼いた事件で笑い、あの壇流クッキングの開祖様が、実は細かい人だったとか言う爆弾発言に驚いたりもしてしまった。結構実はさらりとだけど、楽しめる本かもしれない。満員電車の中や、日曜日の午後辺り、そんな感じの時にてきとーにぱらぱらめくるにはいいと思っている。

 
  操上 恭子
  評価:A
  いやー、面白かった。問答無用の面白さと言っていいんじゃないだろうか。こんなに面白いと感じるのはもしかしたらオバサン感覚なのかも知れないと思って、夫にも読ませてみたのだが、オジサンにもじゅうぶん面白かったようだ。もう本当に言いたい放題。その殆どとはいわないまでも半分くらいが相手の悪口だ。相手に面と向かって口にできる、悪意のない悪口というのは、聞いていて小気味のいいものだ。だけど普通、どんなに仲のよい友達同士だってここまでは言わないんじゃないだろうか。いや、もしかしたら男同士ならあるのかも知れない、という気がしてきた。だとしたら、この二人はかなり男性的な性格で男っぽい友情を育んできたということなのかも知れない。だから嫁に行けないのか?

 
  小久保 哲也
  評価:A
  どうもこういう文章には弱い。気負いがなく、100%自分を出しちゃってるもんね。という割りきりからくる清々しさ。桃井かおりの「賢いおっぱい」もそうだけど、ある年齢に達して、もがいている自分や悩んでしまう自分を、そのまんまの姿で理解できて、評価できるっていうのは、ものすごくいい人生なんだろうなぁと羨ましい。そして、自分を正直に出した時に、側にいてくれることのできる友人がいることの大切さがひしひしと伝わってくる。そういう自分になるための、ひとつのイメージトレーニングとしても最適な一冊。

 
  佐久間 素子
  評価:B
  気楽に読めるもんだからと、電車で開いていたら、ふいてしまった。阿川女史の米研ぎ姿の勇ましさがすごいのだ。気を取り直して、再度本に向かうと、今度は阿川父のおなら攻撃だ。いかんいかん。人前で読める本ではない。自分(もしくは相手)をおとして笑いをとるスタイルは、「私ってばこんなにおちゃめなの」意識が目についたらおしまいなのに、本書はかなり笑える。飽きる前に文体が変わる、往復エッセイという形もうまく機能している感じ。おとす方に誇張はしても、とりつくろう様子はない。色気ももちろんない。著者二人が美人だってことをさしひいても、なかなか勇気のいることだ。悪友ってすばらしい。

 
  山田 岳
  評価:B
  エッセイストいうのんは当世知的女性のあこがれの職業のようで、評者のような者のところにも時おり「どないしたらなれますやろか?」と相談しに来はる人がいてます。これからは「この本を読んでみ」言うことにしました。「これだけ自分の恥をさらけ出せますか?ここまで友だちの恥をさらして訴えられることおへんか?」言うて。そのくらいに、檀ふみはんの「永遠の清純派女優」的イメージが、読んでるあいだ、どんどん落ちていきます。そやのに、読み終わったら、もとにもどってますねん。ふしぎやわ、思うたら、巻末の鼎談で五木寛之センセが「読んだあとに何も残らない」「胃にもたれない」と絶賛してはります。そやさかい、じつに書評家泣かせの対話エッセイ集です。まあ、たまには、ええのんと違ゃいますか?素直に「おもろかった」言わしてもろても。

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