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華胥の幽夢 十二国記
【講談社文庫】
小野不由美
本体 648円
2001/7
ISBN-4062732041
石井 千湖
評価:B
大評判の『十二国記』に初挑戦。しかも番外編からというハンデはあったものの楽しめた。別世界を創造するのは難しいのだろうけど、かなり詳細にわたってきっちり考えられている感じがする。本編を読んでないのでいまひとつピンとこない部分もあったけど。特に本編の主役らしき陽子と楽俊と泰麒の背景がわからん。全体的にはあまりにもきれいすぎるなあという気がしないでもない。表題作の『華胥』が一番よかった。過酷な圧政をしいていた前王を倒した英雄が、なぜ国を治めることができなかったのか。理想とは何か、革命とは何か、考えさせられる秀作。深い。しかも推理小説風の謎解きもある。シリーズを最初から読みたくなってしまった。
内山 沙貴
評価:C
この世界に描かれる人々は本当に素敵だと感じる。世界という舞台に立って一生懸命生きている姿はしかしヒラリと舞ったアゲハのように、光を残して幻に消える。大きな権力も壮麗な宮殿もいずれ消える、かげろうのように、一度瞬きをしている間に。でも一瞬だけ見えた後ろ姿は真冬に灯したランプのように誰のものでもあたたかい。同じ舞台で繰り返される、ただ一度きりの大切な物語。一体何人の人がその台の上に立ち、下を見渡したのだろう?私は今、高い台の上に立って、ドキドキしながら下を見ている。繰り返される歴史、でももう二度とやってはこないこの瞬間を胸に刻み、目に焼き付け、その後ろ姿を寂しく嬉しく見送るのだ。
大場 義行
評価:B
さて、ひと息付きました、本番はこれからですよ、という小野不由美の声が聞こえてきそうだった。「十二国記」はいつまでたっても次の作品を読みたくなるのだが、またこの短編集でもそう。早く次の巻出ないかなあ。まあ、それはうっちゃっておいて、この本だけれども、相当良かったです。今まで描いていなかった、もしくは見えなかった部分を書いているのが堪らない。特にタイトルにもなっている「華胥」。今までに無い、滅び行く国の中心からの視点は哀しいの一言。ちょっと涙ぐみました。これはファンには堪らないのかもしれないけど。ただ、この本は初心者がいきなり読むのはいかがなものかなという典型ではないだろうか。
操上 恭子
評価:AA
シリーズ初の短編集。内容は、本編の流れには直接はそれほど関係ない番外編を集めたものだ。それが、いい。物語の流れにひきづられることなく、ゆっくりと十二国の世界にひたっていられる。それでいて、馴染みの登場人物たちが活躍する様子がわかって、ああ頑張っているんだなと安心できる。忙しいのに何度も読み返してしまった。 作者のなかには、よほど確固とした十二国の世界があるのだろう。でなければ、物語の勢いを借りることなくこんなに読者をひきつけることは出来ないはずだ。中でも最終話「帰山」がいい。特になにが起こるわけではないのだが、やりとりの中に十二国の物語世界が実にうまく表現されている。この二人をこういう風に会わせてしまったのには驚いたが、説得力はある。かなり読み進むまで風漢が誰だかわからなかったのが、ちょっと情けないが。
小久保 哲也
評価:未完読だけどA
この十二国記は、以前にも課題図書に選ばれていた。『黄昏の岸 暁の天』がそれだ。そのときも書いたのだけど、この作品はちゃんと順を追って読みたいために、今回も未読です。だけど、弱い僕はついつい最初の一編を読んでしまった。この作品は短編集なので、ひとつくらい読んでもバチは当たらないだろうと思ったのだけど、あああ、それはやっぱり甘かった。短編なのだけど、十二国の情景が総天然色で目の前に立ち上がってくる。いかん、明日も仕事なのだ。朝から会議なのだぁぁぁぁぁ。。。。とにかく、これはぜひ皆にも読んで欲しい。まだ読んでいない人は前情報無しのまま、まずは題一作目を読むべし。その壮大な想像力に圧倒されること間違い無し!
佐久間 素子
評価:C
十二国記の番外短編集。小粒ながら、かなり読みごたえがある。物語に厚みがあるのは、各編の登場人物たちの覚悟の重みによるものであろう。国をせおって立つために、迷って悩んで手にいれた覚悟の、すがすがしい重み。国のためにささげた人生を、志半ばにして断ち切る覚悟の、いたましい重み、等々。どの短編の覚悟も美しく、まっすぐに読者に届けられる。王のあり方を問う『乗月』『華胥』は、どちらも独立色が強く、本編が未読でも満足できるのではないか。理想のために道を誤る王の姿が痛い。他3編は既読者向き。ほのぼのと優しい『冬栄』は、『黄昏の岸』直前の戴国の話。本編を読んだ身には切なすぎて、泣きそうになった。
山田 岳
評価:E
前回パスしてしまったので、小野不由美初体験。「由美にあらず、不由美」という名前が前から気になって仕方がなかった、のではあるが。そんな名前の著者だから滅法、漢文には強いらしく、登場人物、官職名、地名等々、固有名詞は全て漢字。中国歴史小説のつもりで読み始めると、台詞の軟弱さに肩透かしを食う事になる。中国歴史小説が徹底して男の論理で描かれているのに対し、不由美的神話世界は女・子供の論理で貫かれている。為か、幻想小説ではなく、中国歴史小説の戯画化と読めてしまう。参ったか、この批評も漢字を多くしたぞ(笑)
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