今後の広告業界の業績の見通しは…~『「買う気」の法則』
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今年四月に雑誌『広告批評』が休刊になった。
『広告批評』は文字どおり、広告制作物を批評し、論じることを主眼としていたもの。この雑誌が発行された背景には、広告は作品として評価されるものだという概念があったから。
しかし、広告が批評の対象となる時代は終わった。例えば、新しいテレビを買い換える場合、まず、インターネットの検索ページを開き「テレビ 薄型」とキーワードを入れテレビを調べる。すると、検索結果と合わせて多くの広告が出てくる。これらは文字だけのシンプルなメッセージで、作品として評価される対象ではない。以前なら美しいビジュアルと巧妙なコピーの広告をみて、それが購入につながったのだろうが、今はインターネットの環境が整いすぎている。
2008年からの景気後退で、モノが売れないという状態が続いている。日本は基本的にはモノが行き届いている社会なので、新たな需要が次々と湧いてくるような構造でもない。また「車離れ」や「海外旅行離れ」「酒離れ」といった若者の消費が変化したのも大きな要因。若者の憧れとされていた車や旅行といった"大人の嗜み"が価値を失い、ファッションや装飾品といった、より低価格な代替品に流れるようになった。その代替品の多くは、マスマーケティングが機能しにくい分野。車も旅行も大手企業がマス広告を行うことで、社会のステータスである空気を作っていたが、代替品は嗜好が細分化されており、マス広告で大きな波をつくるのが難しい。むしろ、インターネットが威力を発揮する分野なのである。
車にも海外旅行にも興味がなく、せっかく買う気になったとしても、ネットで安い他の商品を選ばれてしまう。生活を守るために弁当や水筒を家から持っていくサラリーマンが増加するなど、この流れのなかでどう消費者の「買う気」を動かすのか。
広告業界は今、厳しい現実に直面している。