「無印良品」「ユニクロ」好きなシンプル族ってなに?~『シンプル族の反乱』
- 『シンプル族の反乱』
- 三浦 展
- ベストセラーズ
- 780円(税込)
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日本の旧来型の企業に脅威を与えている人たちがいる。それはシンプル族だ。彼らは若い世代に多く、特に女性に多い。彼らはテレビをあまり見ない。彼らは物をあまり買わない。インターネットで商品の情報を集め、慎重に吟味し、比較考量し、十分に納得しないと物を買わない。一方、ユニクロや無印良品といった物は簡単に購入する。彼らはシンプルなものを好むのだ。
このシンプル族の登場によって、市場の縮小に追い込まれたのが自動車産業。また、ゴージャスやデラックスな生活を売りにしてきた百貨店も苦しんでいる。しかし、彼らはただお金を使わないというわけではない。「無印良品」「私の部屋」など、シンプルな衣食住を提案する店や、『クウネル』『天然生活』のようなシンプルな暮らしを提案する雑誌は好んで購入している。
これは、過去30年間以上にわたって脈々と拡大してきたエコ志向とシンプルライフ志向が根底にあり、消費者の価値観が大きく転換してきていることを意味している。さらにいえば、お金があっても質素に暮らすことが「かっこいい」と思う傾向が強まっている。誰もが知っている高級ブランドを買うよりも、白州次郎、正子夫婦のように、古民家に手を入れながら自分たちの暮らしをセンスよく作っていくことがかっこいいとされる時代になったのである。
今後、景気が回復したとしてもシンプル族は浪費的な生活に戻らないだろう。だから、このシンプル族を理解しないと企業は生き残っていけない。消費者を集めてどのような商品が欲しいかとインタビューをすると、「余計なデザインをするな」「余計な色をつけるな」「余計な機能をつけるな」といった、何もしなくていいという声ばかりが聞こえてくる。シンプルなものだと高価格にしにくく、飽きがこないので買い替えが減るといった企業側の都合は通用しないのだ。しかし、もう猶予はない。既にシンプル族の時代がやってきているのだ。