ユニクロが抱える大問題とは~『ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力』
- 『ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力』
- 川嶋 幸太郎
- ぱる出版
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日本のファストファッション代表格といえば「ユニクロ」。製品の品質だけでなくファッション性も追求しているユニクロは老若男女問わず支持され、新規出店も加速している。そんな絶好調と思われるユニクロにも乗り越えなければならない大問題がある。それは後継者問題。
ファーストリテイリング(ユニクロの社名)の現社長は、会社設立時と変わらず柳井正氏。ご存知のように、2003年1月に一度、社長交代がなされている。フリースの大ブームが終わった2002年に柳井氏は辞意を表明、次期社長の座を旭硝子、日本IBMを経て同社で活躍していた玉塚元一常務に渡したが、安定志向の強い玉塚氏のやり方が柳井氏は気に入らなかった模様。世界市場を視野に入れ、売り上げ1兆円を目指すユニクロにとっては失敗を恐れずにチャレンジしていくベンチャー精神は必要不可欠。二人の意見は食い違う一方で、結局、玉塚氏は2005年に社長を退き、柳井氏が社長に復帰した。
それ以降、強力なワンマン性のもとファーストリテイリングの全権限を柳井氏が握っている。柳井氏の子どもは社内にはいないので一族での支配はできない。また、業務に精通し、柳井氏とともに苦労を重ねた生え抜きはみな社外に出て行ってしまった。柳井氏と同等の能力を持つものでないと会社を託すわけにはいかない、となるとやはり後継者候補はゼロということになる。
2年ほど前の雑誌のインタビューで、「2020年に世界一のアパレル製造小売業になると宣言されましたが、そのときもまだ現役を続けていますか?」という記者の質問に対し、柳井氏本人が「多分、引退はできないんじゃないかと思います」と答えている。
柳井氏は人材を育てるということをしてこなかった。それは「人材は自ら育ってくるべき」と考えていたから。しかし、これではまずいと方針を転換し、現在は人材教育に取り組んでいるそうだ。この方向転換が今後のユニクロの成長を左右するのは間違いないが、吉と出るか凶と出るか、順調に見えるユニクロも、実は正念場に立たされているのかもしれない。