男同士の友情は面倒くさい?~『平成オトコ塾』

平成オトコ塾―悩める男子のための全6章 (双書Zero)
『平成オトコ塾―悩める男子のための全6章 (双書Zero)』
澁谷 知美
筑摩書房
1,470円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン

 「男の友情はしんどい」。

 男性学研究の分野では「男の友情は競争的になりやすい」と指摘されています。男同士が会話をすると「俺の方がよくモノを知っている競争」になることがあります。また、30歳になるころには「誰が一番早く家を買えるか競争」「誰が一番早く出世できるか競争」がはじまります。この競争がはじまると嫉妬につながるのです。

 精神科医の児玉孝隆治先生によれば、愛情関係とはあきらかに違い、かといってたんなる羨望でもない嫉妬が男同士の間にはあるといいます。

 また、男性は自分の感情を友人に見せるころができません。「お前のこういうところが気に入らない。直してくれ」という他者批判ならできるのですが、「つらい」「しんどい」といった自分の弱みを相手にさらけだすことが男同士では難しいのです。

 マーケティングライターの牛窪恵氏が著書『独身王子に聞け!』で、30~40代独身男性に話を聞いたところ、彼らはしゃべりだすと止まらなかったそうです。独身女性に聞いた時はひとり平均1時間程度だったにもかかわらず、独身男性の場合は2時間を越え、なかには5時間も話し続けた人も。

 彼らに共通していたのは「誰かに自分のことを話したい」「わかってほしい」という思い。独身女性は友達に話を聞いてもらい、自分をさらけだすということをすでにしているのでしょう。しかし、独身男性にはそんな相手がいない。そんな時に「あなたについて語ってください」と、やってきたライターに、ここぞとばかりに語ったのでした。

 では、「男の友情」をつくるためには、どうすればいいのでしょうか。同じ会社の人はライバルだし、かといって周囲に同じ立場の人がいないので弱音を吐くことができない...という人は、職業別の「弱音を吐く会」なんかを結成してみるのも良さそう。今ではミクシィなどソーシャルネットワーキングのためにツールが発展していますし、仲間集めには苦労しません。思いきって「弱音を吐く会」とでもしておけば、「オレがオレが」的な人は入ってこないでしょう。

 人気マンガ『魁!! 男塾』の舞台の昭和とは違って、平成の世は「男らしくあること」の価値が変わってしまいました。「男らしく」仕事だけに打ち込んでいると、妻子の心は離れていきます。「男らしく」恋人や妻を殴ればDVになり、捕まります。お父さんのように生きることができないのが平成男子の運命。そんな平成男子に「こんな生き方もあるだけど、どお?」と提案するのが社会学者澁谷知美さんの近著、『平成オトコ塾』です。

« 前の記事TOPバックナンバー次の記事 »