物質的豊かさと幸福は結びつかない?~『幸福の方程式』

幸福の方程式 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書 44)
『幸福の方程式 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書 44)』
山田 昌弘,電通チームハピネス
ディスカヴァー・トゥエンティワン
1,050円(税込)
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 不景気の今、幸福と物質的豊かさの関連について関心が高まっています。そのなかでの多くの答えは、「物質的豊かさと幸福は結びつかない」という結論。よく例に出されるのが「物質的に豊かでない発展途上国の人たちは、多くの日本人より幸福そうな顔をしている」「愛や幸せはお金で買えない」といった言葉です。

 そうした"精神的な豊かさ"の追求は、近代社会がはじまって以来、さまざまな形で繰り返されてきました。1960年代末から70年代にかけてのヒッピームーブメントや若者のインドへの憧れといった現象です。
 
 「物質的豊かさと幸福は結びつかない」という議論は、実は今に始まったことではないのです。しかし、「物質的豊かさと幸福は結びつかない」と頭でわかっていながらもなお、私たちが物質的豊かさを求めるのはなぜでしょう。

 本当は、私たちは物質的豊かさを求めているのです。繰り返し「物質的豊かさと幸福は結びつかない」と言い続けるということは、裏を返せば「物質的豊かさと幸福が結びついている、と思っている」ことの何よりの証です。

 1970年前後、欧米や日本の若者たちが憧れたインドや、文化大革命で物質的豊かさを否定した中国が今どうなっているか、述べるまでもないでしょう。そうした国こそが、今、物質的豊かさに向かって舵をとっています。また1980年代、ソ連など社会主義国が資本主義国との経済競争に負けたことがはっきりした時期には、社会主義国の人々はモラルが高く平等なので、物質的豊かさを追究する資本主義国より幸せであると宣伝されたものでしたが、ソ連解体後のロシアの状況をみると、果たしてどうなのでしょうか。

 結局「GDPを上げること=国民の幸福=政策目標」であることは変わらないのです。2008年のリーマン・ショック後、「強欲資本主義が悪い」「物質的豊かさの追究が悪い」といった議論が沸き起こりました。しかし、物質的豊かさの追究が悪ならば「GDPが下がってもかまわない」という議論があってもいいはず。でも、実際にはどうGDPを回復させるかの議論しか進められていません。

 「私たちは物質的豊かさから逃れられないのだろうか」「消費不況を迎えた今、消費と幸福との関係はどうなっていくのだろうか」「物質的な豊かさを超えた幸福の形があり得るのか」というある種、永遠の命題に「パラサイトシングル」「婚活」などの造語の生みの親である山田昌弘教授と、幸福社会をどうデザインしていくかを研究する電通チーム・ハピネスが共著『幸福の方程式』でひとつの答えを導き出しています。

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