南アフリカW杯、日本はどう戦う?~『黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 』
- 『黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年』
- 元川 悦子
- スキージャーナル
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日本サッカー界はかつて、「黄金世代」と呼ばれる1979年生まれの選手たちがリードしていた。この世代には、日本代表最年少の18歳でワールドカップのピッチに立った小野伸二を筆頭に、稲本潤一、高原直泰、遠藤保仁、中田浩二、小笠原満男など優れたタレントがそろう。彼らを中心とした日本代表チームは、99年のU-20ワールドユース選手権準優勝をはじめ、2000年のシドニーオリンピックではベスト8、02年日韓ワールドカップではベスト16入りを果たすなど、日本の歴史を次々と変えていった。また、個人レベルでもJリーグの中心選手となり、ヨーロッパで活躍する選手も多く輩出した。
しかし、状況は大きく変わってしまった。06年のドイツワールドカップ初戦のオーストラリア戦にレギュラーとして出場したのは、高原直泰と坪井慶介の2人だけ。多くの黄金世代がベンチで試合を見守った。また、09年に南アフリカワールドカップ出場を決めたウズベキスタン戦においては、黄金世代でピッチに立ったのは遠藤保仁ただ1人だ。
なぜ、あれほどにも将来を期待されていた黄金世代が、いま不遇の時を過ごしているのだろうか。それは、06年以降の日本サッカー界では、走ることがより一層、重視されるようになったから。そのためにハードワークができない選手は、いくら過去の実績があっても契約を打ち切られ、下部リーグにプレー機会を求めざるを得なくなってきた。黄金世代も例外ではなく、U-18日本代表監督の布敬一郎氏は、「黄金世代が10代だった10年前は、まだ攻撃と守備が分かれていて、攻守の切り替えもゆっくりだった。しかし、今はその境界線がなく、サッカーがよりトータルなものになっている。総合的な力が発揮できない選手は、いくらボールコントロールなどのスキルが高くても、ハイプレッシャーの状況下では難しい」と分析する。遠藤保仁も「今のサッカーはフィジカル的要素が非常に強くなってきている。走れないとサッカーは成り立たない」と危機感を抱いているそうだ。
そういう意味で、現在、ドイツのクラブでコンスタントに出場機会を得ていない小野伸二、1年以上も怪我と戦い続けてきた中田浩二らは、来年の南アフリカワールドカップで代表に選ばれるかどうか厳しい面がある。いくら卓越した技術をもっていても、自分自身を変化させ、最先端のサッカーに適応していかなければ、生き残ってはいけないのが現代サッカーなのだ。
ナイジェリアのワールドユース準優勝から10年。彼ら自身を取り巻く環境も、サッカーの世界標準も大きく変わってしまった。そのようななか、南アフリカワールドカップを日本はどう戦うべきか。黄金世代20人の単独インタビューを収録した一冊『黄金世代 99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年』にそのヒントが凝縮されている。