カーナビ任せで走る人ほど道を間違える!?~『意思決定力』

意思決定力
『意思決定力』
本田 直之
ダイヤモンド社
1,500円(税込)
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 かつて人間は、「誰も守ってくれない」という大前提のもとで暮らしていました。「この木の実は毒なのか、この水は飲んでも大丈夫なのか、この道を進んでも安全なのか?」。基本的なことでさえ、誰も教えてくれませんでした。だからといって、飲まず食わずでは死んでしまいます。人類はほとんどの時代で、自分の判断力で意思決定をせざるを得ない状況の中で生きてきました。

 しかし、近代化により国のシステムが充実し、いわゆる大企業が誕生したことで、これまで個人に委ねられていた意思決定を、会社が代わり行ってくれるようになりました。そもそも日本では、就職するまでの20年近く、まったく意志決定せずに生きてこられるルートが構築されています。受験では○か×かの選択で正解することが求められ、意思決定はほとんど必要とされません。大学までは学力ごとでおのずと進路が決まり、親や教師が自分に代わって意思決定することも少なくありません。結果として、就活生になってはじめて意思決定を迫られ、途方に暮れる人が多いのです。さらに、いったん就職すれば終身雇用という制度のなかで、とりあえず会社が決めたレールに乗れば大丈夫という時代もずいぶん長く続きました。
 
 日本人の場合、結婚するまで親と同居という人がたくさんいるため、生活のこまごまとしたことを自分で決める必要もありません。その結果、自分が矢面に立って意思決定するという経験をもたないまま、年齢を重ねる人が多くなってしまった背景もあるようです。

 レバレッジコンサルティング代表取締役の本田直之氏は、著書『意思決定力』の中で「カーナビを使い始めてから、以前と比べて道がよくわからなくなった」と語っています。カーナビ任せで走ると、思い切り道を間違えたり、既存のルールにとらわれて遠回りになっていたりすることが多々あると。そして、次のように提案しています。現代人は、そろそろ会社や他者という"カーナビ"に人生を任せていたことに気づき、意思決定力という人生の運転技術が衰えていることを自覚するべき――。

 大企業でリストラの嵐が吹き荒れるなど、「流されていても何とかなった」という時代は終わりを告げました。これからの時代を生き残れるのは、自分の人生を運転するのは"自分次第"ということに他人より早く気づき、意思決定力を取り戻した人と言えそうです。

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