実は個性的ではない渋谷の若者~『個性を捨てろ! 型にはまれ! 』

個性を捨てろ! 型にはまれ! (だいわ文庫)
『個性を捨てろ! 型にはまれ! (だいわ文庫)』
三田 紀房
大和書房
580円(税込)
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 個性とは、それほど大事なものでしょうか。もし、個性が育てば、この国が抱える問題は一挙に解決するのでしょうか。

 いま、世間ではとにかく個性を重視して、自由を尊重することがすべてのように語られています。学校でも画一的な教育はやめて、子どもの個性を伸ばすことが求められ、企業においても、能力主義や成果主義が正義とされ、かつての年功序列や終身雇用制度は前世紀の遺物のようになっています。

 そんななか、「個性なんかいらない」「型にはまってこそ、成功できる」と唱えるのは、マンガ『ドラゴン桜』をはじめ、『エンゼルバンク〜ドラゴン桜外伝』『マネーの拳』などの作者・三田紀房氏。偏差値30台のダメ高校生が東大入試にチャレンジする姿を描いた『ドラゴン桜』の大ヒットをきっかけに、多くの教育関係者と会う機会に恵まれた三田氏は、以前から抱いていた「個性なんかいらない」「型にはまってこそ、成功できる」の考えが、確信へと変わったそうです。
 
 渋谷などの繁華街を歩いていると、いかにも「個性的」なファッションをした若者たちを見かけます。よく見ていると、個性的であるはずの彼らのファッションが、みな同じであることに気がつくでしょう。つまり、「これが個性的」という『型』があって、ただその『型』どおりの格好をしているだけなのです。三田氏はこの『型』に以前から関心があり、オシャレに見える『型』や、個性的に見える『型』があるように、人生にも成功できる『型』というものがあるのではないだろうかと考えました。個性も才能もいらない。ただ、用意された『型』にはまることで、人は成功できるはずだと。

 たとえば、箸で焼き魚を食べる時。魚の身をきれいに残さず食べようと思うなら、とりあえず「正しい箸の持ち方」をマスターするに限ります。決してオリジナルの「もっといい持ち方」や「自分ならではの持ち方」を模索する必要はありません。そういった試行錯誤は、もうとっくの昔に先人たちが終わらせていて、「箸の持ち方」は決まっているのです。

 仕事や勉強、人付き合いまで、あらゆる場面に『型』は用意されています。その『型』をいち早く探し当て、自分のものとして身につけることができるかどうかが、人生で成功するための鍵なのかもしれません。

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