10年前より200万円も安くなった35歳の年収~『"35歳"を救え』
- 『“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか』
- NHK「あすの日本」プロジェクト,三菱総合研究所
- 阪急コミュニケーションズ
- 1,575円(税込)
- >> Amazon.co.jp
- >> 本やタウン
若い頃に思い描いていた「35歳」とは、どういう姿ですか? そう問われて本作に登場する35歳の男性の一人がつぶやきます。
「いまじゃ想像もつかないですけど、間違いなく結婚して、子どもがいて、普通の家庭を築いているんだろうなと」。
現在、この男性は埼玉県の職業訓練校に通いながら、再就職に向けて準備中。電気工事士、ボイラー技士など彼が持つ資格は15個以上。どれも国家資格や都知事から与えられる正式な資格ばかり。それでも、就職先が決まりません。もともとトラック運転手として働いていた彼は、ビル管理会社に転職。最終的に年収が300万円を切るようになり、再び転職を考えました。付き合っていた女性もいましたが、年収を理由に結婚は断念。今も結婚はしておらず、アパートで一人過ごす日々を送っています。
「団塊ジュニア世代」と呼ばれる現代の35歳。10年前ならば、35歳といえば家庭を持ち、会社で責任あるポストを任され、社会を担っていくはずの存在でした。それが現在では低所得化、未婚化、雇用の非正規化など、不景気のあおりを正面から受けています。本書はNHK「あすの日本」プロジェクトとして放映された内容を再構築したもの。1万人の35歳のアンケートデータから浮き彫りになる、35歳の「現在」をリアルに伝えています。
たとえば、年収。1997年には平均年収が500万~600万円だったのが、現在は300万円台。10年前よりも200万円は安くなっているのがわかります。35歳時点での出生率は0.86、また正社員の69%の人が、会社に対して不安に思うことについて「収入が増えないのではないか」と回答しています。
今のままでも十分目を背けたくなりますが、この先20年後の日本は「ゼロ成長」「消費税18%」「医療費の自己負担額は現在の2倍」「失業率10%超」「年金30%カット」など、想像したくもない社会になってしまう可能性があるのだそうです。現在、日本の失業率は5.1%。15~24歳の若者に至っては失業率9.9%と、すでにその予兆は始まっています。
今後、日本の社会はどこに向かっていくのか――。今年を振り返りながら、2010年を迎える前に読みたい一冊です。