iPhoneはiPodのように大ヒットするか~『次世代モバイルストラテジー 』

次世代モバイルストラテジー
『次世代モバイルストラテジー』
神尾 寿
ソフトバンククリエイティブ
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 彗星のごとくあらわれ、またたく間に浸透したiPhone。爆発的な人気は単なる「センスの良さ」だけではない。iPhoneはiPodのように世界中でヒットするのだろうか。

 2008年7月に「iPhone 3G」が登場すると、同携帯電話と同じOSを搭載するiPod Touchとの普及台数は全世界で4,000万台に達し(2009年6月)、その半数強をiPhoneが占めた。また、09年6月には新製品である「iPhone 3GS」が登場し、発売後3日間で100万台を売り上げるヒット商品となった。iPhone向けソフトウエアを販売する「App Store」も好調で、サービス開始から1年で累計ダウンロード件数が15億を突破。そこには6万5,000種類のソフトウエアが登録されており、一大マーケットを作りあげている。

 日本市場でも好調を保っており、累計出荷台数は100万台を突破。09年に入ってからは、「都市部の女性層がiPhoneを買い始めた」(ソフトバンクモバイル幹部)という。かつてのiPodがそうであったように、iPhoneも都市部の高感度なユーザーから徐々に受け入れ始めているのだ。
 
 そのようなユーザーの動きを見て、企業側も動き出した。iPhoneの画面の大きさとタッチパネルによるナチュラルな操作性を、新しいモバイルメディアとして注目。例えば、産経新聞は紙で販売される朝刊が無料で読むことができる。さらには、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞のインターネット事業組合『あらたにす』もiPhone向けアプリを提供。雑誌ではニュース誌の『クーリエ・ジャポン』が、特集や連載記事を1号350円で販売している。iPhone向け雑誌配信は新規参入の動きが活発だ。

 また、自動車業界は、カーオーディオ分野でのiPod用Dockアクセサリーに注目。トヨタ自動車や本田技研工業、日産自動車など国内9メーカーがDockコネクタによるiPod接続に対応済み。自動車やカーオーディオ業界では「新車のiPod対応は必須装備」(自動車メーカー関係者)というところまで浸透している。販売台数が増えれば、企業側の開発もすすむという好循環ができている。

 日本市場における今後のiPhoneはどうなるのだろうか。これまでのスマートフォン市場は、一部のITリテラシーが高い層が中心的なユーザーであったが、iPhoneは一般的なホワイトカラーや女性層、若年層にわたって普及がはじまっている。一方、iモード以降、欧米諸国よりも高度に進化し、ワンセグやおサイフケータイなど独自の携帯電話サービスが発展した日本市場は、iPhoneにとって普及のハードルが高いといえるだろう。実際、2008年のiPhone3G発売直後は一時的に売れ行きが滞り、一部の報道で「iPhone失速」とかき立てられた。

 しかし、今や世界中を席巻するiPodも、発売当初は一部のユーザーにしか価値や可能性が理解されなかった。登場してから成功するまで3年の月日を要した。すでに100万台の販売台数をこえたiPhoneは、販売数のランキングでトップ10をキープしている。iPodのように「長期戦モデル」として、歴史をなぞることができれば、日本市場での成功も現実的になる。経済評論家の草間和代氏が、Twitter目的でiPhoneを購入したというニュースが流れるなど、コミュニケーション性の高いサービスを求めて、利用拡大する可能性も秘めている。

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