島の連なりで見た世界、そして日本~『ARCHIPELAGO(アーキペラゴ)』
- 『ARCHIPELAGO』
- 石川 直樹
- 集英社
- 4,800円(税込)
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北極から南極までを人力踏破し、七大陸最高峰登頂を達成するなど冒険家としても精力的に活動する写真家・石川直樹の作品集『ARCHIPELAGO』が発売された。
英語で「群島」を意味する「アーキペラゴ」。日本の南北に点在する島々の景観や風土、そこに住む人々の暮らしまで、著者が10年間に渡って撮りためた200点超の作品が収められている。北は北海道からその周辺の離島、サハリン島、クイーンシャーロット諸島、南はトカラ列島から奄美、沖縄、台湾と、撮影された場所は驚くほどに幅広い。
著者は愛用のカメラを共にしたこの長旅を、「"国境"によって区切られた地図を自明のものとせず、"島の連なり"として世界を、そして日本を捉えなおすという自分なりの試みでもあった」と振り返る。
その南ルートの旅は皆既日食の観測スポットとして注目された悪石島から始まった。悪石島の海岸に行きついた漂流物や道端の猫、沖縄本島の琉球舞踊、鍾乳洞、原付バイクを乗り回す若者の群れ、徳之島の闘牛、渡名喜島の白装束の女性など、本書には多彩な島模様が写し出されている。
南ルートの終点となった金門島は、1950年代に中国と台湾が激しく交戦した軍事的要衝。海岸に並ぶ上陸阻止用の杭や防衛用のトーチカ、戦車といった交戦の爪痕を写し出す一方で、森の中に佇む地元集落の風景や、野原を歩く少女の姿など、島民のリアルな暮らしぶりを伝えている。
そんな石川氏の写真集を見返していたら、「日本人の祖先は日本←タイ←インド←アフリカと南から移住していった可能性が高い」というニュースが発表された。日本などアジアの国際研究チームが、計1900人の遺伝子の個人差を解析し、遺伝的な遠近を判別したところ、言語や生活様式、文化による集団のまとまりとよく一致し、移住ルートが推定できたそうだ。その研究成果が12月11日付の米科学誌サイエンスに発表されている。
石川氏の"島の連なり"として世界を、日本を捉えなおすという試みは、さらにスケールを大きくして続けられるに違いない。世界中を旅する氏だからこそ"切り撮れる"、日本人のルーツを探る写真集を次はぜひ見てみたいと感じた。