大地震の被災地に「千羽鶴」は必要か?~『フィルムコミック 東京マグニチュード8.0』

フィルムコミック 東京マグニチュード8.0 (単行本)
『フィルムコミック 東京マグニチュード8.0 (単行本)』
監督:橘 正樹,脚本:高橋ナツコ
扶桑社
1,890円(税込)
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 2010年1月12日にハイチ共和国で起こったマグニチュード7.0の大地震。地震の規模、ハイチの政情不安定に起因する社会基盤の脆弱さなどから死者は20万人に及び、単一の地震災害としては空前のものとなってしまいました。

 崩壊した刑務所からは、受刑者4000人が脱獄し、首都ポルトープランスでは混乱に乗じた略奪行為が発生。ハイチ政府は1月17日に非常事態宣言を発し、午後6時以降の夜間外出禁止令を出すなど、いまだに混乱状態が続いています。

 世界の多くの国々から、人的・物的・金銭的な救援の手が差しのべられていますが、ハイチ国内の空港や道路の損傷や治安の悪化、情報通信機能の停止などにより適切な物資の運送と配給が滞っており、現地での食糧や医薬品等の深刻な物資不足が生じているようです。

 そんな中、日本のmixi内でハイチの被災者に千羽鶴を送る活動が始まり、議論を呼んでいます。「食糧不足が取りざたされる地域に千羽鶴を送る意味があるのか」「阪神・淡路大震災の経験から千羽鶴は必要ではない」との批判や、ハイチで救助活動を行っているとされる日本人からは「千羽鶴は加熱調理の種火や放火程度にしか使われない」「千羽鶴を運ぶスペースに医薬品や食料を詰め込むことが被災者の望みである」などと語られました。また、ハイチに詳しい支援団体は「理解は難しい」「宗教的な事情もあり配慮が必要では」と難色を示したそうです。

 千羽鶴を届けようとした人の思いは、「家族を失い悲しむ人々に、鶴を送る事で貴方は1人ではないとの思いを伝えたい」ということでした。もし、自分が被災し、身内を失い絶望のどん底に落ち込んでいたとしたら。病院で生死の境目をさまよっていたとしたら。千羽鶴の存在は、たしかに勇気づけられることもあるかもしれません。

――2012年7月21日、15時46分頃、東京湾北部を震源地とした海溝型地震が日本の首都東京を襲う。地震の規模は、マグニチュード8.0。死亡者数は推定18万人、行方不明者 15万人、重軽傷者 20万人以上(2012年7月23日時点)。帰宅困難者、推定約650万人。

 これは、第13回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で優秀賞を受賞したアニメ『東京マグニチュード8.0』の被害設定です。巨大地震が発生し大きな被害を受けた東京を舞台に、主人公の少女を中心とした被災者の目線で物語が進みます。幼い弟と遊びに来ていたお台場で被災し、そこで出会ったバイク便ライダー・真理の力を借りながら、自宅のある世田谷を目指して歩いて帰ろうとするが、その途中、弟が倒れ・・・。

 このアニメがフィルムコミックとして再現されました。防災、危機管理の視点も持ち合わせた内容となっており、ハイチ大地震が起きた今だからこそ、国内で被災地への支援のあり方についての議論が起こっている今だからこそ、読むべき一冊かもしれません。

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