失恋した風俗ライター、戦場にハマる~『風俗ライター、戦場へ行く』
- 『風俗ライター、戦場へ行く (講談社文庫)』
- 小野 一光
- 講談社
- 730円(税込)
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週刊誌やスポーツ誌などによくある風俗記事。男性であれば必ずお世話になったことありますよね? そんな記事を書いている人って、一体どんな人なのでしょうか。
小野一光さんは、エロ本の編集バイト時代から数えると風俗記事を20年以上書き続けた風俗ライター。著書には「セックス・ワーカー女たちの『東京二重生活』」、「彼女が服を脱ぐ相手」など、なんとも興味深いタイトルの本が並びます。それでも当初は、毎日エロに囲まれる生活が辛かったんだとか。そんな時、当時の彼女と大失恋。いろいろなことが重なり、「どこか遠くに行きたい。カンボジアに行こう!」とこんなのノリで戦地に乗りこむことになったのだそう。そう、彼は「風俗から戦争まで」をテーマに執筆活動を行うノンフィクションライターなのです。
かるーいノリで戦地に向かった小野さんの著書『風俗ライター、戦場へ行く』は、やはりかるーい感じで書かれています。カンボジアの地雷や、9.11米同時多発テロのエピソードなど、残酷な現状を目の前にしても、夜は酒盛りしたり、日本で連載している風俗インタビューの記事を書いたり。良いか悪いかは別として、なんだか戦争が深刻なことに感じないのです。小野さん自身も、こんな風に原稿に書くことしか、やれることがないと語っていました。
「べつにだからボランティアをしろとか、物を送れというわけではない。人にはできなることとできないことがある。頭に留めておくだけでいい。一瞬でもその情況を想像するだけでかまわない。たぶんその一瞬に何かを感じることがあれば、いまの餓死者は救えなくても、未来の餓死者を救うことには繋がっていくはずだ」
ちなみに小野さん、戦地では失恋の痛みなんて忘れていたそう。確かに、戦場で起きる出来事に比べたら、日本に住む私たちにとって起こる苦悩なんて、ちっぽけに感じてしまうかも。もし何かに悩んでいる人がいたら、戦争本だなんて重く考えずに、軽い気持ちで読んでみると、自分の悩みなんて吹き飛んでしまうかもしれません。