誉めて伸ばすはもう古い? ぼやいて伸ばす人材育成術~『あ~ぁ、楽天イーグルス 』

あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)
『あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)』
野村 克也
角川書店(角川グループパブリッシング)
740円(税込)
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 新入社員の入社、異動など、新たな環境を迎えた4月。新しい部下が言うことを聞かない、部下がなかなか成長しない、といったことで困っている人も多いのではないでしょうか。一昔前までは、上司から怒鳴られる部下といった光景は頻繁に見られたのかもしれませんが、最近は「誉めて伸ばす」ことが主流になっているようで、怒られる部下の姿を見ることも減ったのかもしれません。

 しかし、怒鳴るでもなく、誉めるでもない手法で昨年大きな成功をおさめたのが、プロ野球・楽天イーグルスの野村克也前監督。

 メディアを通じて選手に厳しい物言いをする「ぼやき」は連日話題になりましたが、大黒柱である岩隈久志投手に対しては特に厳しくしていたと、自著『あ〜ぁ、楽天イーグルス』のなかで振り返っています。

 これは、「人間は無視・賞賛・非難の段階で試される」という野村さんの信念によるもの。なんとかして認められたい、そのためにはどうしたらいいのか、と考えるところから人間の成長は始まるため、最初の段階では「無視」するのだそうです。次に可能性が見えてきたら「賞賛」してモチベーションを高めてあげる。そして実力がついてきたところで、この程度で満足するなという気持ちを込めて「非難」する。そのため、まだ若いマー君こと田中将大投手は誉めることが多く、名実ともにエースだった岩隈投手に対しては、ぼやくことが多かったのだそうです。

 しかしその結果、就任前はダントツの最下位だったチームは、4年間で2位にまで躍進。前任の田尾安志監督時代は借金59だったのが、昨年は貯金11にまでなりました。野村流ぼやき術の真骨頂といったところです。

 同書ではほかにも、なぜ選手に直接言わずメディアを間に挟んでぼやいていたのか、また野村野球の代名詞「ID野球」のデータ作成法など、どのようにチームを強化していったのか、実際のエピソードとともに綴られています。野球にとどまらず、一般社会にも応用できる実用書といった内容で、チームをまとめる立場にある人、リーダーシップを発揮すべき立場の人は、読んでみる価値ありの一冊です。

 部下を誉めるべきか、叱るべきか、どうやって成長させるべきか悩んでいる上司のみなさん。ぼやいて伸ばす、野村流人材育成術を参考にしてみてはいかがでしょうか?

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