30分かけて作る卵かけごはん~『時間マニュアル 』
- 『時間マニュアル』
- 指南役
- PHP研究所
- 1,365円(税込)
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世の中には多くの"適性時間"があります。
グルメ通で知られる放送作家の小山薫堂さんが、京都の有名な料亭「嵐山吉兆」に訪れた時の話。お目当ての料理は、懐石料理ではなく裏メニューの「卵かけごはん」。
まず、黄身と白身にわけ、白身を適度な量に減らす。用いる醤油は、こだわりのダシ醤油。もちろん、ごはんは釜で炊いた熱々のもの。それに削りたてのカツオブシを乗せ、軽くあぶった香ばしい海苔を手で破り、卵と共にかけて食べる。すると、その「卵かけごはん」は、どんな三つ星レストランのメインディッシュより、美味しかったそうです。
さて、本題はここから。
あまりの美味しさに小山さんはおかわりを頼みました。すると、中居さんからこんな言葉が返ってきました。
「30分お待ちください」
エッ! たかが卵かけごはんに30分? 小山さんは驚きました。しかし、そこにはちゃんと理由がありました。なんと、その卵かけごはんは一人前ずつ、ごはんを釜で炊いていたのです。だから、おかわりを出すにはもう一度お米を炊かないといけません。そういう次第で30分かかるわけですが、小山さんが30分待ってもう一杯食べたのはいうまでもありません。
いかがでしょう。たかが卵かけごはんに30分。
小山さんがその卵かけごはんに感動したのは、もちろん「美味しかった」からですが、それと同様に、提供するお店側が"30分"という嘘偽りのない時間をかけたことも大いに影響したのではないでしょうか。
今のご時世、様々なビジネスシーンでクイックレスポンスが求められますが、時と場合によっては、時間をかけて応えてあげるほうが、むしろ相手に対して誠実さが伝わることがあるという一例です。
そう、スローレスポンス。時間は早ければいいというものではありません。急ぎすぎている毎日を、見直してみることも大切。書籍『時間マニュアル』の帯にはこう記されています。「本を読む時間が惜しい? 大丈夫。その1時間、あとでちゃんとお返しするから」と。