ツイッターをやるだけではモノは売れません~『キズナのマーケティング』

キズナのマーケティング ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代 (アスキー新書)
『キズナのマーケティング ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代 (アスキー新書)』
池田 紀行
アスキー・メディアワークス
840円(税込)
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「ツイッターで今までのマーケティングが変わる!」
「2010年はソーシャルメディアマーケティング元年だ!」
「この流れに乗り遅れるな!」

 巷ではそんな空気のなかで、ツイッターの関連本がバンバン発刊され、売れています。でも、ちょっと、待ってください。それって本当ですか?

 皆さんが見聞きしているツイッターの成功事例や、ソーシャルメディアマーケティングの最新事例は、そのほとんどが海外(大半が米国)のものです。日本と海外では、事情がまったく違います。でも、そんなコムズカシイことはあまり考えず、とりあえず他社がやり始めたからウチでも!とツイッターの公式アカウント取得を皮切りとして、ソーシャルメディアマーケティングに取り組みはじめる企業が相次いでいます。

 みなさん、深呼吸してちょっと落ち着いてください。そして、思い出しましょう。

 いままでにも、いろんな概念や手法に手を出してきたけれど、お金も頭も手間もかけずに商品がバンバン売れたなんてこと、ありましたか? 2003年ころに企業でSNSが流行りましたが、口コミが爆発して商品は売れましたか? いや、それどころか閑古鳥が鳴くSNSが続出して、撤退が相次いだはず。05年ころからは企業ブログの開設が相次ぎましたね。その時も口コミ広がりました?  商品、売れましたか?

 さて、今度はツイッターです。「今度はいままでとは違うぞ! なんてったって、ツイッターはリアルタイムウェブだからね」--いやいや、企業SNSのときだって「顧客同士がつながって、ファンや消費者があなたの会社の販売員になる」なんて言われていませんでしたか?
 
 皆さん、そろそろ目を覚ましましょう。ソーシャルメディアマーケティングは「魔法の杖」ではないのです。広告やPRを代替するものでもありません。確かに、従来のマーケティング活動よりは低コストかもしれませんが、その代わりに頭と手足はフルに使わなければなりません。「安く、ラクして、いままでよりも大きな効果を得ることができる魔法」ではないのです。

 でも、落胆しないでください。ソーシャルメディアマーケティングを「目的」ではなく「手段」と考えてみてはいかがでしょうか。いま、あなたの会社がすべきことは、地に足の着いたプランニングをしっかりすること。自社が抱える課題は何で、理想と現実の間にはどんなギャップがあるのかを把握し、それを埋めるシナリオのなかで、ソーシャルメディアマーケティングが向いているのであれば、取り入れればよいだけなのです。

 あくまで、「目的」ではなく「手段」として。

 しかし、世界がソーシャル化していくのは間違いありません。このトレンドは逆流することはなく、より一層スピードを増していくでしょう。消費者=ソーシャルメディアといわれる新しい環境では、企業のマーケティングコミュニケーションも、変わっていかなければなりません。なぜかというと、これから企業はソーシャルメディアのなかでマーケティングをしていくことになるから。
 
 でも、別に怖がる必要はありません。ソーシャルメディアの出現は、きっとワクワクするような近未来をつくり、消費者も企業もハッピーになれるようなポテンシャルを持っています。

 企業のマーケティングコミュニケーションは「変わらなければならない」のではなく「変わることができる」のです。

 「脅威」ではなく「機会」と考えてはいかがでしょうか。

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