パソコンの次に発明されるのは「新聞」!?~『情報は集めるな!』
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米・マサチューセッツ工科大学の著名な教授が、インターネットのポスト・メディアについて、かつてこんな風に語っていた。
「それは、文字のコントラスト性に優れ、頭出しに費やす時間もパソコンに比べて遥かに短い。重量も軽いし、落としたくらいでは壊れない。しかも充電いらずである。ネットの次に発明されるもの、いや、発明されてもおかしくないもの、それは"本"である」
いかがだろうか。言われてみれば、本の印字はパソコンのそれよりも読みやすいし、頭出しも一瞬で済む。軽いうえに丈夫で、もちろん充電など必要ない。キンドルやiPadがいくら本の使い勝手に近づいたとしても、それは本家の本を超えるものじゃない。いや、スクロールではなく、ページをめくるように読めるといった本に近づこうとする発想自体が、既に本の優位性を物語ってはいないだろうか。
そう、少し視点を変えるだけで、本はパソコンよりも優れたメディアに映る。
そこで新聞である。一つ、新聞がない世界を想像してもらいたい。その世界であなたは、上司に「新聞」という新しい媒体を提案する役目にあるとしよう。こんな具合に。
「あの、パソコンでニュースを読むのって、微妙に不便じゃありません? スクロールしないといけないし、どこでも読めるわけじゃないし」
「で、何を提案したいんだ?」
「ニュースを紙にアウトプットした商品です。それも、サイズはB全ポスターサイズと同じ......いや、広げたらB倍かな。それだけ大きいと、記事を一度に読めます」
「ニュースはいくつ載せるんだ?」
「大体、500くらいですかね」
「500! そんなに読めないだろ」
「全部読む必要はありません。興味ある記事だけを拾い読みしてもらうんです、そのために、見出しにメリハリをつけます。大きな事件は大きく、小さな事件は小さく。しかも字体にバリエーションを持たせ、斜め読みするだけで、読みたい記事に出会えるようにします」
「なるほど。結構な代物だが......それ、どうやって売るんだ? ネットなら、自宅にいながら読めるから、わざわざ買いにいかなくていいぞ」
「宅配ですよ、宅配。毎日、自宅まで届けるのです」
「......コストがかかりそうだな。それと、最大の問題はタイムラグだ。ネットは最新のニュースを伝えてくれるぞ」
「こちらも遅くとも昨日起きたニュースを報じます。夕方でよければ、今日起きたニュースを伝えます」
「君、素人じゃないんだから。印刷にどれだけ時間がかかると思っているんだ。入稿、版下、校正、印刷......最低でも4、5日かかるぞ」
「なんとかします」
「何を適当な......それにコストだ。毎日発行して、宅配だぁ? 1冊5千円はくだらないな。1か月なら15万円だぞ」
「いえ、1か月3千円程度を考えています」
「出直してこい!」
──と、あなたの提案は一蹴されるだろう。そう、私たちは生まれた時から当たり前に新聞があるから、そのありがたみに気づいていないが、冷静に考えれば新聞はありえないくらい便利で、画期的な商品なのだ。大きくプリントアウトされているから読みやすいし、見出しだけで斜め読みもできる。毎日、家まで届けてくれ、しかも1か月の料金が3千円程度である。
マサチューセッツ工科大学の教授が指摘するまでもなく、新聞は、画期的なテクノロジーなのだ。