その1「幼い頃憧れたヒーローたち」 (1/5)
――小さい頃の読書の記憶を教えてください。
和田:うちに絵本の本棚みたいなものがあって、そこからひっぱり出して読んでいた記憶があります。『ぐりとぐら』とか『ちいさいおうち』とか『おさるのジョージ』とか『きかんしゃやえもん』とか...。なかでも好きだったのが『シナの五にんきょうだい』。5人の顔のそっくりな兄弟がいて、それぞれ息を長時間とめることができるとか、足がのびるとかといった特技があるんです。兄弟の一人が何かで失敗して死刑を言い渡されるんですが、毎回入れ替わって、海に放り込まれたら足をのばして海面に顔を出したり、窒息させられそうになると息をとめてこらえたりしてうまく逃れる。あれが僕のヒーローものの原点でしょうね(笑)。でも、僕、本を読むのはあまり好きじゃなかったんです。それで親に世界名作全集みたいなものを与えられて「これを読んだらクリスマスプレゼントを買ってやる」と言われて、泣く泣く読んだんです。それでますます嫌いになって...。今でも人からこれを読め、と言われるのがあまり好きではないですね。
――本を読むよりも外と友達で遊ぶほうが好きだったんですか。
和田:いや、一人でいることが多かったです。大阪で生まれて生後3か月で広島に越したんですが、そこでお遊戯みたいな集団行動を一切しない主義の幼稚園に通っていて。で、何をしていたかというと、一人でずっと砂団子を作っていました。それで母親が心配して「ずっと一人で砂団子作っていて、うちの子は大丈夫でしょうか」と園長先生に訊いたところ「竜くんには竜くんの世界があるから大丈夫」みたいなことを言われたらしいです。小学生になると野球をやったりジャングルジムで遊んだりした記憶があるんですが。
――小説を読んだ思い出はありますか。
和田:江戸川乱歩の少年探偵団のシリーズは読みました。『青銅の魔人』とか。おどろおどろしくて怖そうな表紙に惹かれたんですよね。あとは『ズッコケ三人組』のシリーズとか。漫画もよく読みました。『ドラえもん』と、あとは広島なのでうちにも学校にも『はだしのゲン』がありました。『少年サンデー』や『少年マガジン』、『少年ジャンプ』も小学校3年生くらいから読んでいましたね。『リングにかけろ』や『ガクラン8年組』、『スーパーライダー』、『タッチ』が好きでした。『リングにかけろ』はクラスのみんなも好きでしたよ。手首に重りをつけるパワーリストみたいなものが出てくるんですが、それをつけて鍛えて、取った時に釘を打つとボゴーン!となってゴゴゴゴゴッと釘が埋まっていく描写があるんです。「パワーリストすげえ!」となって、実際につけてくる奴もいました。そういう大げさな描写は、今自分が書いているものに通じていると思います。
――テレビでは戦隊ものが流行りはじめた頃ですか。
和田:ああ、「ゴレンジャー」もやっていたと思います。でも僕は好きだったのはアニメの『妖怪人間ベム』。最近DVDBOXが出たので買って見てみたら、やっぱり面白い。あの独特の絵と、妖怪人間の悪と善が混じった感じにすごくしびれるんです。いつか映像化した時には自分が脚本を書きたいと思っていたんですが、すでに実現されましたね。
――じゃあ『デビルマン』も好きでした?
和田:大好きでした。あれも悪の要素がありますよね。ああいうヒーロー像が好きなんです。主人公が美樹ちゃんの前で、彼女に背中をむけて泣きながらデビルマンに変身する回があって、あれが泣かせるんですよね...。小学校1年生から4年生まではそんな感じで、5、6年になると『機動戦士ガンダム』が始まるんです......あれ、読書じゃなくてアニメの話になってる(笑)。そこからプラモデル、ガンプラに凝り始めました。本でいうと、『セーラー服と機関銃』が映画化されて薬師丸ひろ子が好きになって、原作を読みました。そこから過去の主演作の『ねらわれた学園』の原作も読んで、眉村卓が好きになって読むようになりました。短篇集がよかったですね。『C席の客』が面白かった。SFっぽいものが好きだったんです。映画も『スターウォーズ』とかが好きでしたから。
――では星新一さんのショートショートを読んだりしませんでしたか。
和田:中学生の時に星新一さんにすごく読みました。最近たまたま再読したらやっぱり面白いので、また読み返そうと思ったところです。
――その頃は将来何になりたかったんでしょう。
和田:文章を書くことはまったく考えていませんでした。作文も好きではなくて、算数のほうが得意でした。その頃はレンタルショップの「友&愛」でレコードを借りてカセットにダビングすることをよくやっていたので、将来はレコード屋になりたいって思っていました。