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霧けむる王国
霧けむる王国
【新潮社】
ジェイン・ジェイクマン
定価 2,730円(税込)
2004/2
ISBN-4105440012
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  古幡 瑞穂
  評価:C-
   モネ×猟奇殺人=?どうしてモネなんだろう…あまりにも多くの要素が混じり合った小説なので、そこの深い意味まで読み解くまでに至れませんでした。私がこの話を理解するためにはもう少し何らかの助けが必要です。うー、釈然としないよう。
 猟奇殺人ものは好きではないんですが、ここで書かれている殺人事件はそれほどまでにグロテスクなものではなかったです。(まあ、酷いことは確かですが)あとは登場人物の印象が薄いので誰が誰やらわからなくなってしまうことが残念でした。長い物語を読んでいく過程でなんとなく人物像が絵になっては来ますけれど、もっと早い段階でわかりやすい説明をしてくれないと、事件のインパクトごと薄れてしまいます。全体的に深い霧の中に包まれたようなそんなお話でした。あ、でもモネの絵はやっぱりステキですね。

 
  松井 ゆかり
  評価:C
   興味深く読めた小説ではあった。しかし、これはミステリーとして売るべき本なのか。帯に「モネをめぐる猟奇連続殺人」とあるが、これを「めぐる」とは言わないだろうと思うが。
 モネの睡蓮の絵は好きで、でもそれ以外の作品に関してはほとんど無知だったので、口絵の数々も堪能させてもらった。小説中でもモネの人物描写は興味深い。芸術家の遊蕩について「遊びも芸の内」と考えるような物わかりのよさはあまり持ち合わせてないが、この小説においては事実は事実として、その上でモネは好感の持てる人物に描かれていた。
 繰り返しになるが、ミステリーというより、19世紀末のロンドンの描写や人物造形の妙を味わうべき(もうひとつ付け加えるとすれば、不妊治療といったデリケートな問題を敢えて題材として扱っている)作品として読んだ。

 
  三浦 英崇
  評価:D
   よく見かけるラーメン屋さんの売り文句で「素材厳選」というのがありますよね。いい素材使ってるよ、と言いたいのでしょうけど、たとえ素材が良くても、その調理法がなっていなければ、味は保証できないと思うのですが。この作品は、素材こそ一級品を揃えているのに、調理の仕方がいまいちなっていない気がします。
 ヴィクトリア朝のロンドンで、かの切り裂きジャックを彷彿させる連続女性猟奇殺人が発生。一方で、ロンドン滞在中の画家・クロード=モネの過去回想があり、彼と関わる少壮の外交官僚の恋愛話なども絡んできます。各々の素材は、どれをとっても非常に魅力的です。当然、これらの素材が最終的に一つの料理として提供されることを期待してもおかしくないですよね。
 うーん。ラーメンを食べたいのに、サラダバーに連れて行かれて、生野菜を一つずつ好きなように食え、と言われたかのような感じです。料理の腕を見せてほしかったなあ。雰囲気は非常に良くて期待してたんですが……