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ミナミノミナミノ

ミナミノミナミノ
【電撃文庫】
秋山瑞人
定価\557
2005/1
ISBN-4840229147

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  浅井 博美
  評価:D
   このようなジャンルの本(本書は電撃文庫刊)を読むのは始めてで、なるべく偏見を持たないようにしようと思い読み進めたのだが、やっぱり無理だった。どこが相容れないかというと、まず挿し絵があること。挿し絵があるだけならまだしも、いわゆるアニ顔なのである。その上、主人公の中3男子武田君がある理由から夏休みを知り合いに縁の小さな島で過ごすことになったのだが、なぜかその島の女の子はみんなもの凄く粒ぞろいなのだ。年上の女医さんは気の強い巨乳の美人で、お世話になるお家の年下のお嬢さんは甘えん坊でかわいく、物語のキーを握ると思われる同級生の女の子ははっとするほどの美人でミステリアス。男子の願望を全て満たしているんでしょうね。それともこのジャンルでは鉄則なのですか?そのような諸々あって私には楽しめませんでした。でもあくまでも私にはであって、そもそもこの種の本は、その世界に通じていないと批評は出来ないのではないだろうか。ハーレークインやフランス書院が手放せない人もいて、それはそれで何ら非難されることではないし、思う存分楽しめば良い。そういうことだと思う。

  北嶋 美由紀
  評価:B
   最後の文は[二巻へつづく]。従って今回はすべての謎が解けないまま終わってしまう。進行形の話に良し悪しのコメントできないのだが。
 家の事情で8回の転校歴をもつ中3の正時は、それなりの人生経験をふんでいる分、自分のおかれている立場や状況判断にはハンパなオトナより長けていて、順応性のあるイイ奴だ。そんな主人公が夏休みをすごすために訪れた南の離島は何やら謎だらけの奇妙な島でその描写だけでもおもしろい。特に「バス屋」がいい。バス停のプラカードを掲げ、減速したバスに乗るのだが、老人以外は停車してくれない。じゃあ体の重い中年はどうしたらいい? 運動神経や身軽さも必須の島ー貴重な人生経験のできそうな所だ。島民のユニークさに隠された秘密は何か? 結構スゴイ歴史がありそうだ。ピストルを持つ白衣の女医がこの作者のもちキャラらしいが、彼女はキーパーソンなのか? いろいろ課題があって、二巻目も楽しめそうだ。(ちなみに主人公と同年代のわが娘の感想も「オモシロイ」でした。)

  久保田 泉
  評価:D
   なんでしょう…この“萌え”という単語を連想させるような、手に取るのさえ気恥ずかしくなる表紙。さらに、生理的に受け入れ難い、不可思議な題名…。電撃文庫の存在さえ初めて知った私には、大げさでなく異次元体験でありました。
 恐る恐る読んでみると…主人公の中学生、武田正時が、叔母のリカに「環境がいいから、勉強にもってこい」とまんまと騙され、はるか南の岬島で、一人で島民に囲まれ一夏を過ごすというストーリー。リカに貰った謎の首飾りが原因で、奇妙な出来事が、正時の身辺に起こっていく。我が家の小5の娘が喜びそうな話は、なんとか読めるとして、文中にも萌え系アニメが突如バン!と現れるのは心臓に悪い。私ではしょせん無理か、と娘に読ませた感想は、島民のキャラが面白い、ラストがエッ何それ〜、著者近影がホラーみたい。なんとここまでは母と同じ。さらに一言、「でも正時はもっと勉強しないとダメだね」うーん、小学生の方がシビアですな。ごもっともです。

  林 あゆ美
  評価:A
   父親の仕事の都合で中学3年の今まで8回の転校を経験している正時。そうこうしているうちに受験生になっている正時。突如として正時の受験を認識し、「ものすごい環境のいいところだから勉強をするにはもってこい」というリカ姉(正時の叔母・25歳)の言葉にあっさり賛成する両親。ということで、正時は南の島に行くことになる。諸般の事情でたった一人、船に乗らされ……。
 岬島は不思議な島で、着いて早々、激しい身体検査はあるは盛大な宴会もある。なんとかそれらをクリアしていく正時は、島で夏の日々を満喫できる……か? ボーイミーツガール物語を約束されているので、ちゃんとかわいい女の子との出会いも用意されている。だが、もちろんふつうの女の子ではなく――と、終わりが「つづき」の、つまり何巻か続く物語の1巻目なので、一面くまなくおもしろそうな題材をちりばめていながら、完結していない。ちぇ。願わくは、この書評担当中に2巻が出ますように!

  手島 洋
  評価:C
   既に齢を重ねた私のようなものは、こういう機会でもないと、なかなか読む機会のない本だ。ということで、どんなものなのか結構楽しみだった。実はすごくよくできていて、密かにはまったりして。変な期待をして読んでみると、実にまったりとしたアニメを見ているような作品だった。男の子が田舎に行って、可愛い女の子と出会う。周囲の人々と打ち解けようとしない女の子が、なぜか主人公に少しずつ心を開いていく。不思議な事件がいくつか起こったりもするものの、そんなシンプルな話がゆっくりと展開されていく。第一巻ということもあるのだろうが、漫画やアニメではここまでのんびり話を進められない。そういう意味では小説であることに、それなりの意味があるということか。
 そんなわけで、まだまだ話の導入部、ストーリーについて、どうこう言えないところで終わってしまっているのだが、この先になるとメカやらアクションやらのシーンが登場して、ついていけなくなるのではないかという気もする。

  山田 絵理
  評価:D
   これから話が盛り上がるのかなあ、というところで終わってしまった(次巻に続く)。
 15歳の少年が自由奔放な若い叔母にだまされ、一人で怪しげな風習を持つ南の島で夏休みを過ごすはめになる。その島は本土との付き合いを極力拒み、苗字はみな長ったらしく、年齢に関わらず島民をあだなで呼び合っていた。少年は地元の少年少女らとの交流を深めてゆくが、世話をしてくれたおじいが倒れて……。
 なんだかドラマ『トリック』(古い?)と『Dr.コトー診療所』を足して2で割ったような感じだ。なんともどっちつかずのストーリーである。挙句の果てには、島民は不思議な力を持っているらしい。ファンタジーか???さまざまな要素をちりばめて、今後どうストーリーが転んでもおかしくない。
 こういうライトノベルは、挿絵のイラストが目当てで買う人も多いのだろう。だが一番の盛り上がりともいえる場面のページをめくった途端、アニメのイラストが目に飛び込んできて、今までの想像を完璧なまでにぶち壊してくれた。やめてほしい。

  吉田 崇
  評価:B
   いわゆるライトノベル、表紙・口絵にあるアニメ調のイラストにはどうも慣れないが、ヴィジュアル的にキャラクターと近しくなっておくのも悪くはないかと、古くは『ヴァンパイア・ハンターD』『ダーティーペア』、最近では『ブギーポップ』を読んだ時に思ったりもした。で、この本、ううむ、危険? イラストだけでは物語の世界観が分からず、キャラクターの雰囲気も良く掴めない。
 ところが、気を取り直して読むと、これがなかなか切なくていい。変に大人の目を意識しないジャンルだからだろうか、どうでもいいリアリティなんかはなからぶっちぎって、物語を上手に見せてくれるのだ。神話の普遍性がその構造のシンプルさに関係するとしたら、このジャンルの可能性は実はもっと大きいのではないかと考えたりもする。
 春留の「わたしは、正時の友達に、なれましたか?」と言う台詞の後で、上手に終わる話なのに、著者はやっぱり終わらせない。次巻へ続くのだ。広げた風呂敷、どうまとめる?
期待を込めてこの評価。