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ワルボロ
【幻冬舎】
ゲッツ坂谷 (著)
定価1680円(税込)
ISBN-4344010434
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★★
サイバラの子分格・金角ことゲッツ板谷の初小説。まずこれは小説なのか?と疑問が湧くだろう。喧嘩に明け暮れる男子中学生の物語。まるで青年マンガ誌「ヤング○○」みたいなのだ。
ゲッツの大爆笑エッセイ(どれもオススメ!)のあとがきに松尾スズキが「彼の周辺にはエピソーダーがいる」と解説している。信じがたい行動で次々とエピソードを紡ぎ出す……そのケンちゃん(父)もセージ(弟)もバアさん(ストッキングかぶる)もこの物語では封印されている。代わりに中学になると出現する数々のヒエラルキー、成績や容姿や貧富の順列の中で「番を張る・学校を締める」という△に暮らす心情が熱くイタく、そして笑いで綴られる。
同窓会で会っても番長だった男の子はバカ話しかしないから、こんなココロだったのかと私達はゲッツの小説で知るのだ。駆り立てられる心と切実な友情。感動して居ても立ってもいられない。続編を待つ!
用語解説「香ばしい」:きな臭い、暴力の匂い、イケてる、またはイケてない、フィーリングでご利用下さい。
島田 美里
評価:★★★★
昔から「ツッパリ」という言葉には、嫌悪感があった。聞いただけで、ぺったんこの学生鞄や、なめネコや、額にタワシをくっつけたような前髪を思い浮かべてしまう。姿勢も性格も斜めで悪かったな!と開き直ってそうだ。でも、この物語を読んで、なぜかツッパリに対するイメージが良くなった。
ガリ勉だった中学生のコーちゃんは、売られたケンカを買ったのがきっかけで、不良の仲間入りをしてしまう。なんでそんなことで?と思うが、彼らがつるんでいるのは、ただの気まぐれじゃなくて、お互いが必要だからだ。事故死した弟の面影を忘れられずにいる奴も、時折父親が失踪して寂しい思いをしている奴も、仲間といるだけで心の傷が癒されるらしい。コーちゃんの仲間に対する誠実さは、好きな女の子に対しても変わらない。ギラギラした欲望なんてちっともなさそうなシャイな姿は、まるでナイトのようだ。
それにしても、敵対する奴らと、来る日も来る日もケンカ、ケンカ、ケンカ。休符のないカスタネットか、年中無休のお店みたいに休みがない。ツッパリが皆勤賞っていうのも変な感じだけど。
松本 かおり
評価:★★★★★
何がイイって、いきなり帯の写真にノックアウトよ。80年代ヤンキー15歳の<オッサン風味>、このグルリ帯がなければただの真っ黒なカバーで、面白くもなんともありゃしない。私と著者は同い年。ボンタン、チック、短ラン、懐かしすぎる! ああ、こういうワルっていたよなあ〜。私の好きだった○○クン、今どうしてるんだろう。(遠い目……)
本書は、著者初の自伝的長編小説とか。「ざけんじゃねえっ!!」「ぐぅおらあああっ!!」「ズメキャ!!」「ガシュ!!」「ぐぶっ!!」、ド派手劇画調文体で大暴走、中学最後の1年のケンカと友情、意外にウブい恋情を怒涛のごとく語り尽くす<ビーバップ・中坊ワールド>、サイコーに楽しいいいいっ! 500ページのけっこうなボリュームだが、彼等のイキオイに引きずり倒されてスイスイ、グイグイの一気読み。著者によると、本書は「これから書く四部作の第一部」だそうな。続編、お早く願います!
延命 ゆり子
評価:★★★★★
この人の小説がこんなに良いなんて……!(失敬)
『カメレオン』の世界、『魁!男塾』の漢くささ、『クロマティ高校』の愛すべきアホらしさ。それに熱すぎる漢の友情をこれでもかとドバドバ振りかけてるような感じ。参考文献が全て漫画で恐縮です。
自伝的小説というにはあまりにもとんでもない不良の世界。ケンカにあけくれ、次から次へと現れる敵。中学生のくせにスカイラインを乗り回す花形のような奴。中学生に拳銃を握らせるヤクザ。爬虫類のような目で相手を半殺しにする奴。そのおもろいキャラクター造詣もさることながら、要所要所に入るギャグも絶妙!
そんな中、錦組の頭のヤッコの存在感が際立つ。仁義から外れた奴は徹底的に叩きのめし、一度仲間になった奴には絶対的に信頼、命をかけて護る。多くは語らず仲間の責任は全て自分が取る。無力感に打ちひしがれている主人公にヤッコは言う。「大丈夫だよ……。おメーには一生、俺がついてるからよ……」。ななななんてかっこエエ〜!!
家族が好きで、仲間が大切で何が悪い。そんなストレートな思いにノックダウン☆この作品は4部作になるそうだが次回作も必ず読みたい。
新冨 麻衣子
評価:★★★★
岸和田に中場利一、立川にはゲッツ板谷!? スラム街を思わせる立川の町でひたすらケンカに明け暮れる主人公と5人の仲間たち。家族、メンツ、友達、恋……あまりにも多くの問題に囲まれながら、でも6人でいれば笑っていられる。こっぱずかしくなるほどにストレートではあるけど、初めての小説としては驚くほどに完成度が高いように思える。
6人のキャラクターがいいんだよね。戦闘系、頭脳系、情報系……と、いつしか個々の能力が生きたメンバーになってるし。仲間同士で馬鹿言ってるコミカルなシーンと、それぞれが家族のことで悩むシリアスなシーンとのバランスがすごくいい。そこに読んでるこちらがあきれるほどに激しいケンカのシーンがばんばんはさまってくる。ハラハラしたりじんとしたりくすくす笑ったりしながら一気に読める小説だ。
これはまだ中学生の頃の話。ラストには続編を書く意思があるように解釈できるので、岸和田愚連隊と同じくシリーズ化になるのかも。続き出たら、買います。
細野 淳
評価:★★★★
本を一目見た瞬間からインパクト抜群。オビには、リーゼント姿の二人がこちらを見ている写真が……。題名も凄い。ワルくてボロいから「ワルボロ」。板谷さんの中学時代では、不良といえばそんな感じだったのだろう。最近の不良は、何だか小奇麗な格好しているのが多いけど。
でも、不良って結構義理堅かったり、友情に厚いところがあったりするものだ。ひとたび仲間に加われば、いつでもどこでもつるんでいるし、仲間に困ったことがあれば、必ず助ける。そして敵がくれば、皆一枚岩となって戦う。そんな話を、その当時の言葉のままで書いているから面白い。
中でも最高なのは、ラップの悪口バトル。読んでるだけでも頭の中に勝手にリズムが流れてきて、思わず爆笑。かなり俗っぽいけど、浅薄だったり、鼻についたりすることのない板谷さんの文章も、きっとそんなラップ体験を通して生まれたのだろう。