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├2001年7月
├2001年6月
└2001年5月
カポネ
【角川書店】
佐藤賢一
定価1,995円(税込)
2005/11
ISBN-4048736582
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
島田 美里
評価:★★★
大物になるかならないかは、その人の持っているエネルギーの量で決まるのかもしれない。そして、善人になるか悪人になるかは、そのベクトルの向きで変わるのだろう。
これまで、アル・カポネといえば、映画「アンタッチャブル」のロバート・デニーロしか思い浮かばなかった。血も涙もないギャングのイメージだ。しかし、この作品を読むと、多面体の中のたった一面を見ていたに過ぎないことに気がつく。本気で堅気に戻ろうとし
たことも、世のため人のために巨額の金をつぎ込んだこともまた、紛れもなくアルの人生なのだ。
後半、禁酒局の特別捜査官であるエリオット・ネスが登場して、アルのパーソナリティーが、さらに明らかになる。世間のレッテルからすると、アルは悪で、エリオットは善だ。だけど、アルに心酔しているエリオットがいうように、移民系であるふたりは「ただアメ
リカに認められようとしただけ」なのかもしれない。過剰な出世欲では、互いによく似たタイプだ。
彼らの人生は、善悪を嗅ぎ分けたいと思う人の心を惑わすくらい、強烈に人間臭い。
松本 かおり
評価:★★★★
ずんぐりむっくりで額は後退中だが肌艶は良く、大柄で貫禄十分。左頬の三本の傷から「スカーフェイス」の異名を持つ裏社会の帝王、アル・カポネ。「仲間は決して見捨てない」「世の中は白だ、黒だじゃないんだよ。灰色というものがあって、その濃淡を競える人間だけが、のしあがっていけるんだよ」。とにかく<カッコイイ>の一言だ。
2部構成の本書、第1部で、カポネが下っ端から超大物に登りつめるまでの華麗かつ激烈な生き様が描かれたあと、第2部では一転して、カポネを追う捜査官側に視点が移る。いきなりの転換には戸惑うものの、暗黒街の男と正義の男の対決がまた見どころ。特に、「飛んだ食わせもの」老判事が仕切るカポネ裁判の行方は、とくと見届けずにはいられない。
ギャングでありながら広く民衆の支持を受けたカポネ。そこらのツマラン男の妻になるくらいなら、こういう男の愛人になりた〜い!!
佐久間 素子
評価:★★★
禁酒法時代のアメリカで、裏社会のボスとして君臨したアル・カポネの一代記。第一部は、カポネが裏社会の頂点に立つまで、第二部は一転して、禁酒局の特別捜査官エリオット・ネスの事情を描く。繊細なカポネと、功名心の権化のようなネス。『アンタッチャブル』も観ていない私は、先入観ゼロなので、本書が直球なのか変化球なのかわからないのだが、著者が作りこんだ緻密な人物像は十分新鮮だと思う。カポネは、情に厚いイタリア人であり、ビジネスライクに人を殺すギャングであり、マスコミ向けには陽気なスポークスマンである。そのどれもが一流実業家としての公の顔であり、持って生まれた私の顔でもあるのだろう。矛盾にみちた人間性が、トップに立つ者の条件なのかと思いめぐらせたくなる。
後半、物語の視点はネスにシフトして、カポネの存在を外側から浮かび上げる思いきった構成。頂点をきわめたら後は下るだけ。ネスの軽薄さもあって、終盤の寂寥感がつらい。悪漢小説につきもののカタルシスはあまり期待しない方がよいかも。
延命 ゆり子
評価:★★★★
カポネ。云わずと知れた暗黒の帝王。多くの人がこの巨悪のヒーローの伝説を耳にし、目にしてきた。手垢にまみれたようなこの素材。だがその料理の仕方は実に見事!闇酒の販売で莫大な利益を得るそのビジネスセンス、敵の命も恩人の命も将棋の駒のように動かす信じがたい冷酷さ、反面家族には滅法甘く情にもろく同胞をとことんまで面倒見てしまうその弱さ。その矛盾に満ち満ちたカポネの魅力に、あたしもうクラクラ。
かたやもう一人の主役は、カポネを逮捕まで追い詰めた特別捜査官のエリオット・ネス。映画『アンタッチャブル』の主人公。しかしそれが、かわいそうなくらいの引き立て役なんである。厚顔無恥でなんとも卑小。その情けなさたるや!二人の対比が物凄い。んも、ケビン・コスナーのイメージメタメタである。小気味良さすら。
映画と小説。どちらの解釈が正しいのかは私にはわからない。けれどその落差こそがこの物語をより多面的に、たまらなく面白くしているのも事実だ。みんなちがってみんないい。金子みすず風に思った。
新冨 麻衣子
評価:★★★★
伝説的なギャングスター、アル・カポネの生涯がスリリングに描かれる。
とにかく頭が切れる。だからこそマスコミを手なずけ民衆の心を集めることができた。その裏にある素顔は、イタリア系らしい人情深い一面。だからこそマフィアのボスでありながら貧しい人々のヒーローとしてあがめられた。そしてもう一方で、ここぞというタイミングで自分が世話になったボスの命さえ狙うという、冷酷なまでの嗅覚。それゆえにシカゴの裏社会を統一し、全米から注目されるギャングスターにまで登り詰めてしまう。
前半はこのカポネの少年時代からシカゴのトップを極めるまでが描かれるのだが、後半はFBI特別捜査官であるエリオット・ネスの視点で描かれる。凝り固まった正義感故に、禁酒法違反でカポネを追いつめようとするのだが、その実、カポネイズムに心酔している、ちょっと薄っぺらなやつだ。彼の視点から描かれる、カポネの最後はひどく寂しい。が、やりきれない気持ちは、最後のエピローグでちょっと救われる。
実際カポネの伝説的なエピソードがあってこそだろうけど、それをこの著者のフィルターを通して素晴らしいひとつの長編小説に昇華してる。
細野 淳
評価:★★★★
前半はアル・カポネのニューヨーク時代のことから、シカゴの闇の支配者となるまでの、活躍を描いた伝記。禁酒法を逆手にとってのビジネス、シカゴ市長選の裏工作、自分のボスの殺人計画…そんな、いわゆる悪事の数々も、もちろん書かれている。ただ、だからってアル・カポネが極悪非道の人間ではないのだ。本書で引かれるのは、むしろアル・カポネの人情味溢れる場面。家族と過す時間を何よりも大切にしていたり、自分の縄張りに住む人間は必死に守ろうとしたり、大恐慌の際には率先してボランティア活動に乗り出したり…何よりも大勢の人に好かれる要素を、多分にもった人物であったのだ。裏社会の人間であっても、決して単なる非行少年などとは違う。
そして、後半はアル・カポネの逮捕から、死後彼が『アンタッチャブル』という本を通してより大きな存在となっていく過程が描かれている。密造酒を取り締まり、カポネに真っ向から勝負しようとした、エリオット・ネスという人物が主役。だが、このような人間ですらも、カポネとは敵対的な関係にありながら、どこか彼に憧れてしまうような存在であったらしいのだ。エリオットの、カポネに対する微妙なコンプレックスが、所々で見られるのが面白い。そんな描写が、本書の大きな魅力の一つであるのではないか。本当の大物って、敵味方を問わず、人を圧倒するようなオーラを持つ存在であるのだ。