『はい、泳げません』

はい、泳げません
  • 高橋秀実(著)
  • 新潮文庫
  • 税込420円
  • 2007年12月
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  1. 十二歳
  2. 荒蝦夷
  3. リボルバー
  4. 箆棒な人々
  5. はい、泳げません
  6. 文章読本さん江
  7. ハートシェイプト・ボックス
岩崎智子

評価:星5つ

 「彼女にも一緒に海に潜って、自分が感じた喜びや驚きを感じて欲しい。」
と語ったダイバーがいた。しかし人間、愛情と同じくらい大事なものがある。自分の命だ。だから、命を脅かす恐怖からは、できるだけ離れていたいのは当然である。なのに、著者は「今までずっと避けてきたからこそ生きてこれた」水に立ち向かう。本書の第一章は、著者が決心するまでの経緯、次の章からは水泳教室での日々がユーモラスに綴られる。本書が「泳げない人」「泳ぎたくない人」の視点で書かれている点が、教本として良い。なぜならば、「呼吸しようと考えないで」「泳ごうとしないで」など、「泳げる人」なら聞き流せる内容でも、その逆の立場から見れば、全てが疑問になる。その疑問を著者が咀嚼して文章化するので、非常にわかりやすいのだ。ちなみに、「泳げる人」の視点は、各章の最後に「桂コーチのつぶやき」として載っている。ある人には「当たり前」が、実はそれ以外の人にとっては「ヘンな事」になる。そんな「個々の違いを認め合う意義」なんて、全然謳いあげてもいない事をそこはかとなく感じさせる所も、本書の忘れがたい味である。

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佐々木康彦

評価:星5つ

 いやぁ、笑った、笑った。
 本書は水への恐怖心のため泳げない著者が、水泳教室に通い、泳げるようになるまでの爆笑エッセイ。

 水泳と自転車って子供の頃に体で覚えるので、大人になってから覚えるのって難しいのかも知れません。体で覚えるというよりは理屈が必要になるからです。
 本書の著者は考えすぎて3歩すすんで2.9歩さがるといった状態。古式泳法をやってみたり、禅の思想を持ち出したり、何故そこまで余計なことを考えるのかと読みながら思って(笑って)いました。
 しかし、著者は2.9歩さがっても0.1歩づつ着実に進んでいきます。さがりながらも進むことは後進のために道を踏み固めることにつながり、本書はエッセイというよりは、泳げない大人たちのバイブルと言えるのではないでしょうか。

 とかなり褒めましたが、この本を読んだだけでは泳げるようにはなりませんのでご注意を。ただ、笑えることは確かです。

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島村真理

評価:星3つ

 大人といえども出来ない事はたくさんある。水が怖い、泳げない、という人は世の中には多くいるでしょう。これは、子供の頃のトラウマから泳げない大人となった著者の水泳教室通い奮闘記だ。
 苦手克服の前向きな姿勢を期待していると、驚くほどネガティブな言い訳が並べ立てられている。あ然としつつ、彼の心中告白を読み進むと、だんだんバカバカしくなってきて笑いがこみ上げてくる。時々挿入されているスイミングスクールの先生のつぶやきが、著者の思いと大きくかけ離れていて、またそれに拍車をかける。嫌ならやらなくていいのである。子どもじゃないのだから。でも、水に親しもう、泳げるようになる快感を得ようとする著者の3歩進んで2歩下がる挑戦は、やっぱり、なんでもやってみるものだなという共感と感動をくれました。

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福井雅子

評価:星4つ

 これは笑える。そうなのだ。生まれつき運動神経のいい人というのは、人に物を習うときに耳から入った情報が頭を素通りしてそのまま体を動かす筋肉に届くらしい。ところが私を含めた運動神経のあまりよくない人は、耳から入った指示がなぜか頭で一回止まってしまう。右、左、左……手をこのくらい曲げて……ええと、このくらいかな……足は……などと考え始めたらもうおしまいである。頭で考えるなと言われると、ますますわけがわからなくなる。運動神経のいい人にはわからないであろうこの感覚が「わかる!」という人は、(たとえ泳げても)この本に共感できるはず。
 極度のカナヅチである著者が、コーチの名言(迷言?)だらけのアドバイスに右往左往しながら泳げるようになるまでの苦闘の2年間を描いた作品なのだが、名言過ぎるコーチのアドバイスを言語感覚の鋭すぎる著者の頭がひねくりまわす様は爆笑もの。一緒に指導を受ける主婦の方々が、これまたいい味を出している。泳げる人も泳げない人も、素直に笑える楽しい本である。

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余湖明日香

評価:星2つ

 はい、私も泳げません。
元競泳選手桂先生の指導方法がユニークで、私もこれなら泳げるようになるかもと思ってしまう。
湯船に浸かって本を読みながら、高橋さんと一緒に、「手は水をおさえるだけです」と念じながら水をおさえてみる。さすがに息継ぎの練習まではせず、半身浴をしながら読み続ける。練習中に疑問に思ったことは本や他のほうほうで徹底的に調べる高橋さん。日本泳法については初めて知ることが多く勉強になる。
お風呂で読むのに最適文庫ランキング第一位。
ただし練習に一緒に参加している人たちやエピソードが少し単調で読みづらかった。

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