『箆棒な人々』

箆棒な人々
  • 竹熊健太郎 (著)
  • 河出文庫
  • 税込893円
  • 2007年12月
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  1. 十二歳
  2. 荒蝦夷
  3. リボルバー
  4. 箆棒な人々
  5. はい、泳げません
  6. 文章読本さん江
  7. ハートシェイプト・ボックス
岩崎智子

評価:星5つ

 まず、このタイトルを読めるか、読めないかで、読者を選ぶ作品ではないだろうか。そして帯に書かれている人物達の肩書き「虚業家/康 芳夫」「画怪人/石原 豪人」「生涯助っ人/川内 康範」「全裸芸術家/糸井 貫二」もまた、読者を選ぶ要素となろう。さて、これらに怯まず本書を手に取った読者諸君、幸いなるかな。個性豊かな、いや、個性だけでできていると言っても良い人達のインタビュー集が、貴方達を待っている。「糸井貫二 ダダの細道」に関しては、「そもそも、他人との接触を拒んでいる氏とのインタビューが成立し得るのか?」という、インタビュー以前の問題が浮上してハラハラさせる。周辺の人々に対するインタビュー、断りの葉書。やはり実現できずに終わるのかと思ったが、往復書簡が、かすかな糸をたぐり寄せる。インタビュアーの「聞きたいエゴ」、語り手の「語りたいエゴ」のぶつかり合いであるインタビュー。この回だけはインタビュアー押され気味、と見えたが皆さんは果たしてどう見るか?

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佐々木康彦

評価:星4つ

 「ネッシー捕獲探検隊」「謎の類人猿オリバー君」「ノアの箱舟探索プロジェクト」「家畜人ヤプー」全部知っているのにそれを仕掛けた康芳夫氏のことはあまり知りませんでした。
 面白いのは氏が招聘した「アラビア大魔法団」。実は全員ドイツから呼んだ白人で、顔を黒く塗っていたんだそうです。
 ヤラセをやるにしても稚拙というか、大胆というか。昭和の匂いがするノスタルジーを感じさせるエピソードで、笑えました。

 本書には康芳夫氏の他に画家の石原豪人氏、昨年からなにかと話題の川内康範氏、ダダカンこと超前衛芸術家の糸井貫二氏へのインタビューが収録されていて、どの方も非常に魅力的な人物でした。特に川内康範氏は昨今テレビなどのメディアから伝わってくる怖い感じではなく、情があって寛大で義の人なんです。悪いイメージを持っている人は是非本書を読んで頂きたい。熱涙にむせびます。

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島村真理

評価:星5つ

 誰かが注目しなければ忘れ去られる人はたくさんいる。昭和のサブカルチャーの偉人たちに出会えてよかった、そう思わせるほど、インタビューされている人たち(康芳夫、石原豪人、川内康範、糸井貫二)はすごいのだ。
 中でも作家・作詞家などで有名な川内康範氏のインタビューには衝撃を受けた。もろもろの騒動で、強情なおじさんと思っていた彼が、一本貫いた考えの持ち主であると知ったこと、作品に織り込まれている正義など、私の邪まな考えなどふっとばす力があった。戦争を経験し、戦後を生き抜いた彼らの「生きていくということ」の力強さ、うわべだけでない底力にホレボレする。
 人は見た目ではない。まさにそれを実感できる一冊。困難を越え、直接偉人から取材をされた著者の情熱と執念にも感服した。

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福井雅子

評価:星4つ

 素材自体がすでに面白いので採点が難しい作品である。ライターである著者が、四人の戦後サブカルチャーにおける「伝説の大物」たちに行ったインタビューを中心にまとめた「戦後サブカルチャー偉人伝」なのだが、登場する分野も活動もまるで接点がないながらも、四人はそろいもそろって世間の常識をはるかに飛び越えた破天荒な面々――まさに「箆棒な人々」なのである。
あまりのハチャメチャぶりを読むだけでも十分に面白いのだが、丁寧なインタビューと、その人物がまとったオーラのようなものまで伝える著者の筆力をもって、四人のどこがタダモノではないのかに斬りこんだところを高く評価したい。この手の人々に対する取材では、とかく奇行ばかりをクローズアップして奇人変人にまつりあげようとしがちだが、この本ではむしろ彼らの人間らしいふつうの一面に迫ろうとする姿勢もみられ、ノンフィクション作品として好感がもてる。

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余湖明日香

評価:星4つ

 ほとんど初めて知る人たちばかりだったが(知っていたのは昨年の森進一騒動でテレビによくでていた川内康範さんのみ)、大変面白かった。
歴史の表舞台には名を残さない人たちの自由奔放な活動。特に最初の一人康芳夫さんの、世間をあっといわせるような出来事の数々!どこからそんなことを思いつき実行していくのか。大きなことをやるには、常識もお金もその後の自分も考えずに行くしかないのか、としばらく自分の小ささを実感した。
彼ら4人の様々な戦争体験が興味深かったが、ご本人の魅力ももちろん、話を引き出し展開させまとめ上げた著者竹熊健太郎さんの力もすごい。

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